4 エントロピーと情報【本書の目次へ戻る】

 情報には継起的な隣接関係および同時的な相似関係に関わる二つの側面の側面があり、前者に関わる情報プロセシング:行為の遂行に要求される情報量を削減するか、行為主体が処理可能な情報量を増幅することによって、不確実性を削減し予測可能性を増加させること、および、後者に関わる情報プロデュース:確立性−新奇性の連続体上で、記号の組み合わせを代えたり新しい意味を付与するといった意味作用の編集、とを区別することができる。情報操作とは、情報プロセシングにおいてある特定の情報を伝達しないことによって操作される人の情報処理能力を低下させること、または、情報プロデュースにおいて正確でない意味付与を行うことの両方を含めたものであり、情報エントロピーを高めることである。情報プロセシングによる情報エントロピーの減少は、もともとあった情報から欠落した部分を類推によって補正することができるが、新しい情報を創造することはできない。情報プロデュースによる情報エントロピーの減少は、もともとあった情報から欠落した部分を類推によって補正するだけでなく、情報の創造によって新しい意味作用を創り出すことができる。物理エントロピーはエントロピーが増加する方向に向けて非可逆的に変化するのと比べて、情報エントロピーはこのようにエントロピーが低減する方向に向けても可逆的に変化する点が異なる。
図4−1 リスとトラ

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