8 自己組織化【本書の目次へ戻る】

 自己組織化とは、システムが自らの構造を創り出していく過程のことであり、組織と集合行動における自己組織化を、社会システムと文化システムとの相互浸透という視点から捉える。組織を構成するコミュニケーションを制御するものは組織文化であり、集合行動を構成するコミュニケーションを制御するものは集合文化である。組織・集合行動における自己組織化過程の第一の分岐点は、組織・集合文化とコミュニケーションを構成する行為自体との矛盾としてのゆらぎが発生しこのゆらぎが組織・集合文化を変異させるか、それとも、組織・集合文化とコミュニケーションを構成する行為自体との矛盾としてのゆらぎが発生せず組織・集合文化を変異しないか、である。組織・集合行動における自己組織化過程の第二の分岐点は、変異したにせよ変異しなかったにせよ、組織・集合文化が採択されるのか、それとも、棄却されるのかである。組織や集合行動を構成するコミュニケーションを行ううえで情報エントロピーが低ければ組織・集合文化は採択され、情報エントロピーが高ければ組織・集合文化は棄却されがちである。変異しなかった組織・集合文化が採択された場合では、構造保存自己組織化が起き組織・集合行動の構造は保存される。変異しなかった組織・集合文化が、すでにその組織・集合文化は組織・集合行動の制御プログラムとして適切ではなくなったなどの理由によって淘汰された場合では、構造崩壊自己組織化が起き組織・集合行動の構造は崩壊する。組織・集合文化が変異して変異した組織・集合文化が新しい組織・集合文化(規則や慣習)として定着せずに淘汰された場合では、構造探索自己組織化が起き組織・集合行動の構造は探索される。組織・集合文化が変異して変異した組織・集合文化が新しい組織・集合文化(価値や規範)として定着し採択された場合では、構造変容自己組織化が起き組織・集合行動の構造は変容する。
図8−1 社会システムと文化システムとの相互浸透を通じた組織および集合行動の自己組織化過程

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