第2章 第3節 コンティンジェンシー理論【第2章の目次へ戻る】

 コンティンジェンシー理論とは、Merton(1940)が指摘したような、不安定な環境下において官僚制は有効であるとは限らない、という官僚制の逆機能論の問題意識を継承して、唯一最善の組織構造は存在せず、組織の環境と構造との適合(contingency)関係によって組織成果が向上する、という前提に基づく分析枠組のことである。この分析枠組に準拠した先駆的研究はBurns and Stalker(1961)であり、また、コンティンジェンシー理論の命名は、Fiedler(1967)やLawrence and Lorsh(1967)によってなされた。ここでは、まず、この分析枠組の理論的基盤となるMarch and Simon(1958)の近代組織論や、Galbraith(1973)の情報処理モデルについての検討を行い、そして、コンティンジェンシー理論に基づく経験的研究のレビューを行っていくことにしたい。
 コンティンジェンシー理論とは、不安定な環境下において官僚制は有効であるとは限らない、という官僚制の逆機能論の問題意識を継承して、唯一最善の組織構造は存在せず、組織の環境と構造との適合関係によって組織成果が向上する、という前提に基づく分析枠組のことであり、安定した環境下では機械的組織が有効であるが、不安定な環境下では有機的組織が有効である、という命題が提唱された。しかし、この命題の検証を意図した経験的研究は、分析対象や測定した環境変数が大幅に異なることもあって、一致した結果が得られておらず、これを、環境の異質性と官僚制化との交互作用項は組織成果と正の相関関係にあり、また、環境の変動性と官僚制化との交互作用項は組織成果と負の相関関係にある、と二つの命題に分割して再定式化することを示唆できよう。さらに、この分析枠組の理論的根拠となる近代組織論や情報処理モデルは、コンティンジェンシー理論を「知見はあっても理論が無い」状態から脱却させた点は評価できるが、均衡維持的な保存的自己組織化を重視した点や、組織成員の応答行為を通じた非公式的な組織化を軽視した点において、機械論的な組織観の克服に成功しているとは言い難い。

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