第3章 第4節 社会的要因の再評価【第3章の目次へ戻る】
初期のヒューマン・リレーションズにおいては、非公式的な相互行為や集団という社会的要因が重視され、職務満足やリーダーシップの研究では集団や組織を分析単位とするものもあったが、ネオ・ヒューマン・リレーションズ以降の組織研究においては、欲求などの個人・心理的要因が重視され、ほとんどの経験的研究は分析単位を組織成員個人に設定するようになった。しかし、1960年代の終わり頃から、組織成員の態度や行動を個人の心理的要因に還元して説明することには限界があるという反省がなされ、組織や仕事自体の特性といった社会的要因が再び重視されるようになってきた。ここでは、このような研究動向として、組織風土や職務特性の研究を取り上げることにしたい。
集団・社会的要因を重視する研究動向として、組織風土や職務特性の研究が行われるようになったが、組織風土は満足などと、職務特性は主観法による組織構造尺度と独立でないことが指摘されたように、これらの概念は未整理な部分がある。なお、当初は欲求階層説のような心理的要因を重視していたが、のちには社会的情報処理モデルに示されるように社会的要因を重視する方向に変化していった職務特性の研究の推移に、1970年代の組織行動研究の縮図を見ることができよう。
組織風土とは、組織成員の知覚をアグリゲートした変数の総称として位置づけられ、これは公式構造とは無相関であり、組織環境ともあまり強い相関は示さない。
職務特性とは、満足と正の相関関係にあり、成果とは上司の評価や自己評価による場合では正の相関を示すが、客観指標による場合では有意な相関を示さない。また、職務特性と満足や成果との関係を強化する成長欲求のモデュレーター効果も強いものではない。そして、職務特性は創発的構造尺度にほぼ等しく、公式構造とは無相関であった。さらに、職務特性は社会的情報の操作の影響を受ける。
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