第3章 ヒューマン・リレーションズ【第1部の目次へ戻る】
第1節 非公式組織
第2節 ネオ・ヒューマン・リレーションズ
第3節 組織成員の態度の研究
第4節 社会的要因の再評価
官僚制理論やコンティンジェンシー理論が公式組織のみに分析の焦点を当てたのに対して、組織成員の人格的な相互行為から構成される集合体としての非公式組織に着目した研究がヒューマン・リレーションズ・アプローチである。ここでは、ヒューマン・リレーションズという用語は、おもに組織成員個人を分析単位とし、組織成員間の相互行為、および、これの共時的形態としての組織成員の態度や知覚などを分析対象とする組織研究、という意味で用いることにしたい。本章では、まず、ヒューマン・リレーションズの出発点となる非公式組織の概念についての検討と、職務満足と生産性との関係についての分析のレビューを行う。このような初期のヒューマン・リレーションズは、集団や集合体という社会的要因を強調していた。しかし、つぎに検討するネオ・ヒューマン・リレーションズにおいては、組織現象を欲求などの個人の心理的要因に還元して説明しようとする、還元主義的な原子モデルへと転化していった。そして、ネオ・ヒューマン・リレーションズへの反省を踏まえた、近年の社会的要因を重視した組織行動研究について検討していくことにしたい。
ヒューマン・リレーションズ・アプローチは組織成員の感情的態度などの非公式的側面に焦点を当てた研究動向であり、当初は非公式組織という集団レベルの要因に関心が寄せられていたが、次第にネオ・ヒューマン・リレーションズに顕著なように、組織現象を組織成員の心理的要因に還元して説明しようとする原子モデルが優勢となってきた。しかし、近年は職務特性や組織風土などの社会的要因が再評価されるようになった。ただし、このアプローチは、組織の環境や公式構造などの組織レベルでの属性を説明することができず、また、組織が均衡維持的な構造保存的システムであると仮定する均衡理論を前提としているために、組織の能動的な組織化や変動を説明できない、という欠点を持っている。
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