第3章 第2節 ネオ・ヒューマン・リレーションズ【第3章の目次へ戻る】

 Barnard(1938)や初期のヒューマン・リレーションズの理論的前提は、非公式組織の均衡維持機能を重視した有機体モデルであり、集団・社会的要因としての非公式組織によって組織成果の説明を試みた。しかし、1950年代の中盤には、さまざまな組織現象を欲求や動機づけという個人の心理的要因に還元して説明しようとする原子論的な理論的前提に立脚した、いわゆるネオ・ヒューマン・リレーションズと呼ばれる理論志向が台頭してきた。
 ネオ・ヒューマン・リレーションズとは、組織目標と個人の目標や動機づけとの一致という理念と、「自己実現人」仮説とを前提とする理論であり、組織が均衡維持システムであると仮定している点においては初期のヒューマン・リレーションズと同様であるが、しかし、組織現象を組織成員個人の心理的要因に還元して説明しようとしている点においては、初期のヒューマン・リレーションズの有機体論的性格とは異なり、原子モデルを理論的前提としている。なお、ネオ・ヒューマン・リレーションズの理論的前提となる欲求階層説は経験的研究において支持されていない。しかし、ネオ・ヒューマン・リレーションズは、その理念が経営イデオロギーとして採用されることが多かったなどの理由によって、のちの組織研究に大きな影響を与えた。

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