第3章 第3節 組織成員の態度の研究【第3章の目次へ戻る】

 ヒューマン・リレーションズの流れを汲む研究は、おもに、組織成員個人を分析単位として、満足などの組織成員の感情的態度といった非公式組織に関わるさまざまな測定手段を開発し、膨大な量の知見を蓄積した。初期のヒューマン・リレーションズでは、分析単位を組織や集団に設定したものもあったように集団的要因を重視していたのに対して、1960年代以降の研究では、ネオ・ヒューマン・リレーションズおよびいわゆる行動科学の影響を受けて、個人に分析の焦点が当てられることが多かった。また、これらの研究は、標準化された測定手段の開発を通じて大量の知見の蓄積をなしたことは評価できるが、しかし、概念枠組の検討が不十分であったために、異なる概念のもとで実質的には同様な内容のデータを測定していたり、また、変数間関係の理論的根拠が明示されていない、といった問題点を抱えていた。ここでは、満足、コミットメント、労働疎外などについての調査研究における測定手段と知見を中心として文献サーベイを行っていくことにしたい。
 組織成員の組織に対する感情的態度は、満足、コミットメント、同一化、および、疎外感といった概念からさまざまな測定手段が開発された。しかし、これらは概念的に独立であるか疑問の余地があり、また、これらの変数どうしはたがいに相関が強く統計的な独立性も弱い。成果との関係についての分析の結果は、満足と成果との因果的順序は明確ではなく、コミットメントや同一化と成果との関係は正の相関を示す場合もあれば、負の相関を示す場合もあった。また、満足などの組織成員の感情的態度と組織環境および組織構造とは概して無相関であった。なお、これらの研究の問題点として、変数間関係の理論的根拠が明確化されていないことや、なかには、心理学的還元主義的な理論的根拠に基づく仮説が明示されている研究もあるが、このような仮説は概して支持されていないことを指摘できよう。

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