第4章 第2節 社会システムと自己組織化【第4章の目次へ戻る】

 ここでは、社会システムにおける自己組織化に関する理論についての検討を行うことにしたい。そこで、まず、社会システムが構造保存システムであると仮定する理論についての批判的検討を行い、つぎに、社会システムにおける散逸的自己組織化の萌芽的研究を取り上げ、そして、社会システムが自己創出的システムであると仮定する理論について検討することにしたい。
 従来の社会システム・モデルの理論的前提を自己組織化モデルの視点から再検討するならば、まず、Parsonsの社会システム理論は、社会システムが均衡維持的もしくは構造保存的システムであると仮定して、社会システムの保存的自己組織化の側面のみを分析したに過ぎない。つぎに、Marxの弁証法的唯物論は、階級闘争というゆらぎの発生源に着目した点は優れていたが、しかし、生産手段の所有関係以外の軽視、下部構造から上部構造への非可逆的な因果関係の仮定、および、自己創出的な秩序形成の軽視、といった限界を持っていた。また、Meadの象徴的相互行為論やSch{tzの現象学的社会学は、自省的行為や社会的行為における意味作用の新奇性に着目した点は評価できるが、反面、主観主義の誤謬とマクロな視点の欠如という限界を指摘できよう。なお、近年では、自己創出や自己組織化を鍵概念とした概念枠組が提唱されるに至っているが、ただし、このような概念枠組に基づく大量観察データを分析した経験的研究は皆無に等しい。

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