第5章 第1節 組織と合理性【第5章の目次へ戻る】

 合理性はまことに多義的な概念であり、例えば、Weber(1972)は、目的合理性、価値合理性、実質合理性、および、形式合理性、といった合理性の下位概念を用いている。組織は、限定的な目標達成を志向する点において目的合理的であり、また、一般的な規則に基づく官僚制的統制を行う点において形式合理的であるように、合理性という概念と非常に関連が深い。そこで、ここでは、情報理論の視点から合理性概念を吟味することを試みることにしたい。
 社会的行為の合理性とは、隣接関係における行為連関の条件つきエントロピーの少なさとしての予測可能性と、相似関係における行為連関の条件つきエントロピーの少なさとしての理解可能性という、二つの独立した次元として再定義することができ、さらに、隣接関係における行為連関の条件つきエントロピーの少なさとしての予測可能性は、形式合理性に相当する公式的予測可能性と非公式的予測可能性に、相似関係における行為連関の条件つきエントロピーの少なさとしての理解可能性は、目的合理性に相当する手段的理解可能性と価値合理性に相当する表出的理解可能性とに分類できよう。また、コミュニケーション合理性は、自己創出的な理解可能性であると言えよう。そして、保存的自己組織化は予測可能性とりわけ形式合理性を向上させる。一方、散逸的自己組織化の場合は、ゆらぎの自己増幅過程においては、理解可能性および予測可能性の両方とも低下するが、これらは自己準拠的な秩序の自己創出を通じて再び向上する。

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