補論 第10章 方法論的前提【本書の目次へ戻る】

 本書の目的は、組織の多様性や非合理的要素を重視した組織の非均衡理論を構築することであり、ここでは、このような目的を満足化し得ると考えられる手段について検討することにしたい。なお、科学とは、理論化によって現象の多様性を削減することにより、ある意味において、近代の申し子としての、予測可能性の増加を意図するものに他ならないものである。しかし、組織に限らず、社会学が研究対象とする社会現象とは、天体の運動などと比べると、非常に多様であり予測が困難なカオスのようなものである。そこで、本書では、従来の機械論や原子論に代えて、Prigogineが言うような、「カオスからの秩序(order out of Chaos)」を前提とする自己組織化という視点を、組織理論への導入を試みることにした。そこで、ここでは、まず、古典物理学などの近代科学と社会学などの現代科学との相違を明らかにし、社会学方法論についての検討を踏まえたうえで、本書で採用する研究方法を選択していくことにしたい。
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