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神道・日本文化研究国際シンポジウム(第3回)「神道の連続と非連続」 
公開日: 2004/10/2
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神道・日本文化研究国際シンポジウム (第3回)
神道の連続と非連続

開催日 平成16年9月4日(土)13時半〜17時、5日(日)10時半〜17時半
会場 國學院大學120周年記念2号館1階2104教室

タイム・スケジュール

9月4日(土)
挨拶及びシンポジウム趣旨説明 井上順孝 (國學院大學教授)

〈セッション1〉司会 中井ケイト (Kate Wildman Nakai, 上智大学教授)

発題1
リュドミーラ・エルマコーワ (Liudmila Ermakova, 神戸市外国語大学教授)
「神道の概念と初期の歌論のある問題」
コメント 加瀬直弥 (國學院大學21世紀研究教育計画嘱託研究員)

発題2
アルノー・ブロトン (Arnaud Brotons, フランス、国立東洋言語文化研究所講師)
「古代・中世における熊野の神の変貌と連続について」
コメント 藤井弘章 (國學院大學日本文化研究所専任講師)

9月5日(日)
〈セッション2〉司会 ノルマン・ヘィヴンズ (Norman Havens, 國學院大學講師)

発題3
ファビオ・ランベッリ (Fabio Rambelli, 札幌大学教授)
「『麗気記』にみる神道の「連続」と「非連続」」
コメント 太田直之 (國學院大學21世紀研究教育計画嘱託研究員)

発題4
ゲイリー・エバーソール (Gary L. Ebersole, アメリカ、ミズーリ州立大学教授)
「宗教史研究における神道の扱い」
コメント 遠藤潤 (國學院大學日本文化研究所助手)

〈セッション3〉司会 井上順孝

発題5
クラウス・アントーニ (Klaus Antoni, ドイツ、テュービンゲン大学教授)
「神道と国体: 政治的イデオロギーとしての連続性を中心に」
コメント 松本久史 (國學院大學日本文化研究所助手)

〈総合討議〉
総合コメンテータ 川村邦光 (大阪大学教授)

1. 趣旨

「神道・日本文化研究国際シンポジウム」と題する連続シンポジウムを重ねてきたなかで浮き彫りになった事柄の一つに、神道を日本文化や日本宗教一般の中でどのように位置づけたらいいのかという問題がある。これは神道をどのような視点から捉えるかで大きく異なってくる。今回は、「神道の連続と非連続」をテーマとして、神道という概念が必要となるのはどの時代からと考えるか、神道と呼ばれてきたものの時代的変化をどう理解するか、神道と他の宗教との関係をどう扱うか、などの問題について、日本及び国外の神道研究の傾向を踏まえながら、討議することにした。議論を通じて、現在の神道研究において見解が分かれているのはどのような点かを確認することを目指した。

これまでのシンポジウムと同様に、国外 (ロシア、フランス、イタリア、アメリカ、ドイツ) で先端的な研究業績を発表してきた神道研究者を迎えて発題をお願いした。今回はさらに、本学の若手研究者5名がそれぞれの発題を受けてコメントを加えた。これにより、問題提起を本プログラムで進行中の研究調査と絡ませながら展開していくことを図った。

2. 内容

ermakova エルマコーワ氏は、平安初期の歌論において、日本で最初の和歌とも言われる『古事記』の「八雲立つ 出雲八重垣 妻籠みに 八重垣作る その八重垣を」が捨象されている点に注目し、これを語り手のパースペクティブのもとに素材を取捨選択しつつ構成する「メタヒストリー」の観点から論じた。そして、「神道」概念の内容分析においてもこのような方法論を用いることが適切だと提案した。

brotons ブロトン氏は、律令国家成立期の記紀に表れる熊野と、平安後期の熊野参詣との間の非連続を確認しつつ、それでもなお連続するものとして、パンテオンにおける神と神との間の母子神関係を示した。

rambelli ランベッリ氏は、中世神道の代表的文献である『麗気記』をとりあげ、神仏習合思想の枠組みの中で神の概念を捉えながらも、仏教の宇宙論、救済論を自己否定し、仏教以前の次元にまで遡ることで、神の国日本の優位性を根拠づけようとする、思想的ダイナミズムを分析した。

ebersole エバーソール氏は、英語圏の宗教史研究において神道の連続性ばかりが強調されてきたことの理由、背景を批判的に考察し、今後望まれる研究の方向として、(1)マイクロ・ヒストリー、(2)氏子集団だけではない一般人の神道信仰、(3)女性、ジェンダー、(4)ユーザーから生まれる宗教、といった観点を示した。

antoni アントーニ氏は、『古事記』『日本書紀』成立から中世を経て近世・近代に至るまでの「神道」の連続性の核心をなすのは、天皇家の支配的地位の正当化という政治的目的であるとして、その展開を素描して示した。

kawamura 以上の5氏の発題、各発題に対する本学若手研究者からのコメント、およびフロア参加者との質疑応答を踏まえ、総合コメンテーターの川村邦光氏は、次のような問題を提起した。(1)「神道」をどこで捉えるか。神道思想史と民間の神信仰とをどうすりあわせるか、制度的観点をどう考えるか。(2)天皇支配の正当化という点について。逆に、神道のなかで天皇をどう利用してきたか。古事記・日本書紀をどう位置づけてきたか。(3)中世をどう評価するか。

それを受けて発題者およびフロア参加者による討議が行われた。近代化のなかで地域信仰をまとめあげる役割を仏教が担ったタイ、ミャンマーと日本の国学運動との比較、庶民レベルの信仰生活と天皇との関わりなど、新たな視点も提出され、また時間的な連続・非連続のみならず他宗教との交渉における同時的な次元での同一性・差異性の認識も論点に加えながら、活発な議論が交わされた。今後、国内外の神道研究の実りある連携を図っていくためにも、今回とりあげたような前提的な問いを繰り返し問い直していく場が必要であることを再確認して、議論を閉じた。

discussion

なお、当日の発題、コメント、討論を記録した報告書を刊行する予定であり、詳細についてはそちらをご参照いただきたい。

(文責: 黒崎浩行)

リンク:『神道・日本文化研究国際シンポジウム(第3回)神道の連続と非連続』の刊行

リンク:Encyclopedia of Shinto
 
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