ホーム >> COEプログラム事業の遂行と成果について >> c. 国際会議・シンポジウム >> 総合 総合シンポジウム(第2回)「神道の形成発展−異文化・仏教との関わりを中心に−」 | |||
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開催目的 本プログラムの大きな柱は神道・日本文化の独自性と普遍性の解明であり、昨年開催された第1回目の総合シンポジウム「神道とその周辺」でも重要なテーマとして採り上げられた。 このことは、「神道と日本文化に関する形成と発展の研究」を担うIIグループでも重視されており、事業開始段階から道教・儒教などの外来宗教思想や、東アジアでの異文化間交流に関する研究を推し進め、外国の信仰対象や思想、儀礼様式などの外国からの伝播過程や定着の度合いに関する調査を重ねてきた。 特に平成17年度からは、日本の宗教・文化のみならず、政治や経済面にまで影響を及ぼした仏教との関係解明を重点目標に据え、史料を収集しつつ研究会を実施した。 このシンポジウムはそうした取り組みの一環であるが、初日の基調講演、2日目の研究会議、3日目の国際研究会議、関連展示会といった多くの企画から構成されるので、このページでは基調講演と関連展示会のみを紹介する。2日目に開催された研究会議「中世神仏文化の点と線」および3日目の国際研究会議「古代・中世の異文化間交流」については、それぞれの報告ページを参照されたい。 ※ 参照 研究会議「中世神仏文化の点と線−真福寺の神道書と伊勢神道−」(神道宗教学会との共催) 国際研究会議「古代・中世の異文化間交流−固有信仰と外来宗教−」(国史学会との共催) ◆基調講演 1.開催目的 基調講演は、宗教史に深い見識を有する研究者から得た知見を、翌日以降の研究会議はもとより、今後の事業推進にも反映させるべく開催されたものであり、シンポジウムの基軸である。 2.開催日時 平成17(2005)年12月2日(金) 14時〜17時20分 3.開催場所 國學院大學120周年記念2号館2203教室 4.講師・司会(この項敬称略) ・講師 末木 文美士(東京大学大学院教授)「神道学と仏教学」 義江 彰夫(東京大学大学院教授)「神仏習合史の歴史的展開−ヨーロッパ・中国との比較をとおして−」 ・司会 千々和 到(事業推進担当者・拠点副リーダー) ※ 参加者・277人 5.講演の概要 「神道学と仏教学」 末木氏はまず、東京帝国大学(現・東京大学)における仏教学関係の講座設置の経緯について、日本の伝統的な仏教教学の流れを汲む印度哲学講座の設置に民間の後押しがあったことや、仏教史学や儀礼研究はそれとは別の研究領域であった点などを説明した。その上で同大学における神道講座の特徴についても触れ、大正6(1917)年に設置されはしたものの、研究室自体には学生がおらず一時期専任教官もいなかった点や、その後拡充された際には歴史学的研究がなされていた点から、学内における近代アカデミズムの中で神道学が独自性を十分に示せなかったと指摘した。そしてその一因として、神話研究が政治的な問題と密接に関連していた点を挙げた。 末木氏は最後に、近代神道研究に存在する制約された面を理解する必要性を説き、今後研究上避けて通ることのできない神仏関係の研究を進めるに当たっては、別々の形で展開してきた神道学と仏教学が、互いを尊重しあい、連携を図りながら研究を進めていくべきであると締め括った。 「神仏習合史の歴史的展開−ヨーロッパ・中国との比較をとおして−」 義江氏は、スウェーデンやデンマークなどのゲルマン系社会における、キリスト教伝播過程での基層信仰的要素の維持状況を、その信仰対象や遺物、文芸作品から抽出した。また、中国の五台山の寺院における信仰対象や伝承などから外来宗教が土地の信仰を取り込みながら、人々に組み入れられる素地を作っていたことを論じた。 その上で、古代から中世にかけての日本の神仏関係について、仏教伝来によって神祇信仰が体系化され、やがて本地垂迹説、神本仏迹説に至るといった変遷過程はあるものの、常に両者が共存する形で展開されている点を指摘した。そしてその背後に日本に他民族と日常的な確執がないという、北欧や中国とは相違する歴史的経緯が存在することを認識すべきであるとした。 6.講演で得られた成果 末木氏、義江氏が講演された内容は、神道研究の視野を拡げる上でそれぞれ意義深いものであった。末木氏によって、教理面から神仏関係を把握することが、特に神道思想の研究を進める上で必要不可欠であるという認識が得られ、義江氏の講演からは、比較宗教史的側面から古代・中世の神仏関係を確認することの重要性を学ぶことができた。 冒頭にも述べたように、今後は、講演の意義を事業推進にいかに反映させるかが課題となるが、この点については、今回の基調講演において阪本是丸事業推進担当者が発言して示したところの、神道・日本文化の発展過程における近世の重要性なども念頭に置きながら、翌日以降の研究会議の成果と併せた検討が必要となろう。 ◆関連展示・「『中世日本紀・神道書籍』展覧会」「真福寺神祇書展観」の開催 1.開催目的 本プログラムでは平成17年度より、神仏関係に関する調査研究のテーマの1つとして、ここ30年来様々な史料の発見によって活発な議論がなされている、中世神道思想の検討を重点目標に据えている。 中世神道は、それが反映されている典籍から、仏教や外来宗教思想の影響をもっとも鮮明に把握することができるので、神道の独自性や連続性を探る上で重要な研究テーマとして位置づけることが可能である。そこで、この意義を多くの研究者等に知悉してもらうため、(1)神道研究の拠点である本学図書館所蔵の典籍と、(2)現在当該研究上貴重な典籍の多くを所蔵している真福寺宝生院・大須文庫の史料を展示することとなった。 今回の展示は、國學院大學図書館・神道資料館の協力を得、名古屋大学大学院の阿部泰郎氏ならびに真福寺宝生院のご厚誼により開催された。特に各位に御礼申し上げる。 2.開催日 (1・「『中世日本紀・神道書籍』展覧会」)平成17(2005)年11月30日(水)〜12月7日(水) (2・「真福寺神祇書展観」)平成17年12月10日(土) 3.開催場所 (1)國學院大學神道資料館(國學院大學渋谷キャンパス内) (2)真福寺宝生院(愛知県名古屋市中区大須) 4.展示品 (1)成果刊行「『中世日本紀・神道書籍』展覧会 展示図録」のページを参照されたい。 (2)『大田命訓伝(伊勢二所皇御大神御鎮座伝記)』『東大寺衆徒参詣伊勢大神宮記』ほか。 ※(2)の図録を希望の方は21世紀COEプログラム研究センター(電話・ファクシミリ03-5466-0132)までご相談下さい。 なお、基調講演の中で末木氏が宮地直一のことについて触れたが、この宮地の旧蔵していた天神人形を公開する目的で、平成17年10月18日から12月18日の間、白根記念渋谷区郷土博物館・文学館で「天神像−天神さまと天神人形−」が開催された(同館および、國學院大學学術フロンティア事業実行委員会・神道資料館・図書館との共催)。本プログラムでは総合シンポジウムの開催にあたり、この特別展を関連企画と位置づけた。 文責:加瀬 直弥(21世紀研究教育計画嘱託研究員) |
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