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神道・日本文化研究国際シンポジウム(第2回)「〈神道〉はどう翻訳されているか」 
公開日: 2003/10/3
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第2回 神道・日本文化研究国際シンポジウム「〈神道〉はどう翻訳されているか」報告

1. 目的
神道に関する基本用語には、日本人の宗教観念や宗教行為の特徴を考えていく上で大きな意味をもつものが数多く含まれている。それゆえ、『古事記』や『日本書記』、神祇信仰がうかがえる歴史書、神道思想が展開されている書物、その他、神道に関わる書籍や文書を外国語に翻訳する際には、神道の基本用語をどう理解し、どのようなコンテキストに位置付けるかが、もっとも重要な課題となってくる。
 すでに『古事記』は英語、ドイツ語、フランス語、ロシア語、韓国語など多くの言語に翻訳されている。また、『日本書紀』も英訳その他がある。また最近は、中世、近世、さらに近代の神道関連の書籍が、抄訳を含め外国語で紹介されることが多くなってきている。そうした翻訳の過程で、どのような議論が起こっているのか。〈神道〉に関わる用語の翻訳にはどのような困難さがあるのか。国外からの翻訳経験者をパネリストとして迎えて、以上のような点を中心に多角的に論じてもらった。最も翻訳例が多い英語圏をはじめ、その他の言語圏における状況を把握し、神道・日本文化の研究発信が抱えている課題を明確にしていくのが、本シンポジウムの目的である。
 なお、國學院大學の21世紀COEプログラムでは、プログラムの一環として、平成14年度に『神道事典』の英訳プロジェクトをスタートさせ、15年度はこれをCOE支援プログラムとして継続している。この作業の過程では、国内外の神道・日本文化研究者のネットワーク形成が進行しており、この点をも十分考慮した上でのテーマ設定となっている。

2. 開催日程
2003年9月20日(土)
14:00 開会の挨拶
第1セッション 国学の部
司会 中井ケイト(Nakai, Kate Wildman)
14:20-15:40 発題 .▲鵝ΕΕДぅ泪ぅ筺次Wehmeyer, Ann)「翻訳で失われて残念   
だと思った本居宣長の『古事記伝一の巻』」
16:10-17:30 発題◆.沺璽・マクナリー(McNally, Mark)「解釈学的な算術として
の国学の翻訳」
18:00〜 懇親会(國學院大學・院友会館)

2003年9月21日(日)
第2セッション 神道古典の部
司会 中牧弘允
10:30〜11:50 発題 ジョン・ベントレイ(Bentley, John)「日本書紀の英訳につい 
て」
<昼休み>
13:00〜14:20 発題ぁ.侫薀鵐愁錙Ε泪察Macé, François)「古事記翻訳の試み」
14:30〜15:50 発題ァ]ダ煥 (No Song Hwan)「古事記 翻訳に関する回顧」
(以上、各発題は40分、質疑応答は40分)

第3セッション 総合討論
 司会 井上順孝
 コメンテータ ヘレン・ハーディカ(Hardacre, Helen)16:10〜17:30  

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3. 発題者(発題順)
パネリスト
Ann Wehmeyer (アメリカ、フロリダ大学準教授)
Mark McNally  (アメリカ、ハワイ大学助教授)
John Bentley  (アメリカ、北イリノイ大学助教授)
François Macé  (フランス、国立東洋語文化研究所教授)
魯成煥  (韓国、蔚山大学教授)
コメンテータ
 Helen Hardacre  (アメリカ、ハーバード大学教授)
司会
 Kate Wildman Nakai(上智大学教授)
 中牧弘允 (国立民族学博物館教授)
 井上順孝 (國學院大學教授)

*使用言語 日本語

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4. 開催場所
國學院大學百周年記念館3階視聴覚教室

5. シンポジウムの内容
このシンポジウムは本年3月に行われた第1回のシンポジウム「各国における神道研究の現状と課題」に続いて行われたものである。第1回と同様、COEプログラムの関連事業として行なわれている『神道事典』(國學院大学日本文化研究所編、弘文堂)の英訳と関連づけて開催された。
第1部では、アン・ウェイマイヤー氏が、日本の古典を翻訳する際には、漢字のもつ微妙なニュアンスが失われることがあることを指摘し、マーク・マクナリー氏が訳す者と訳される者の主観性の違いについて取り上げ、「国学」の訳語が統一されていない問題などを発表した。
第2部では、ジョン・ベントレイ氏が『日本書紀』を14年間かけて翻訳した際の難点とその解決策について詳細な例を挙げて論じ、フランソワ・マセ氏が『古事記』の翻訳には当時の日本社会の理解や詩的文体として翻訳するセンスが必要と指摘、魯成煥氏が『古事記』翻訳を通して韓国社会に現れた反応などについて発表した。
第3部では総括討論が行われて、個別の発題と質疑応答を踏まえた議論が展開された。
今回のシンポジウムには、研究者・学生・一般をあわせて約100名の参加者があった。個別発表、また総括討論においても、質疑応答にそれぞれかなりの時間を充てられていたが、それが短く感じられるほど、非常に活発な意見交換・議論が行われた。個々の翻訳にかかわるミクロな問題のみならず、翻訳という作業にともなう文化レベルのマクロな問題までが話し合われた。
マクロな問題としては、次のような議論が行われた。第1回シンポジウムでも議論になった、国外で「神道研究」という領域が成立しているのかという問題に関連した議論として、翻訳者は必ずしも『古事記』・『日本書紀』などを神道文献として取り上げているわけではないことが述べられた。また、『古事記』と『日本書紀』は、まったく異なる文献であるという指摘があったが、この点については、ベントレイ氏が「『古事記』は個人の日記、『日本書紀』は村の日記」と、巧みな比喩で表現した。したがって、「神道に関する文献」として一括して扱いうるものではなく、異なった翻訳技術が必要とされるということが強調された。
また、言語学的な解釈によって、日本古典の新たな解釈を生み出すという、研究の最先端を切り開くことも可能だということが示された。さらに、各文献の用語を翻訳するにあたって、アルファベット表記にとどめるか、意味まで訳すのかという問題も話し合われた。たとえば、「国学」の訳語としては、nativism、National Learningなどの訳語がありいずれも統一的な理解とはなっていない。だが、KOKUGAKUという表記にして翻訳することをあきらめるのではなく、国学というものの本質をどう理解するかということから翻訳という作業が始まるということも議論された。
翻訳者は何を目指しているのかという問いかけも行われたが、今回のシンポでは翻訳という作業は単に言葉を移し変えるのではないことが共通した理解となったのではなかろうか。今回のシンポジウムがすべて日本語で行われ、言葉の壁が問題ではないということが分かったことも大きな収穫であった。今後は、日本も含めて各国の神道文献の翻訳者が個別に翻訳・研究を進めるのではなく、互いに意見交換・議論をしながら翻訳・研究を進めていくことが重要であると確認された。

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 なお、第2回シンポジウムの実行委員は以下の通りである。

国際シンポジウム実行委員長 
國學院大學神道文化学部教授 井上順孝

実行委員  
國學院大學神道文化学部講師  Norman Havens
國學院大學神道文化学部講師 黒崎浩行
國學院大學日本文化研究所講師 藤井弘章
國學院大學日本文化研究所助手 遠藤潤
國學院大學COE研究員      平藤喜久子
國學院大學日本文化研究所兼任講師 小池靖
國學院大學日本文化研究所調査員  Levi McLaughlin
國學院大學日本文化研究所調査員  日平 勝也
國學院大學日本文化研究所調査員 辻村志のぶ

(文責:井上順孝、藤井弘章)

リンク:『神道・日本文化研究国際シンポジウム(第2回) 〈神道〉はどう翻訳されているか』の刊行

リンク:Encyclopedia of Shinto
 
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