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ミニ・国際シンポジウム「〈神道〉はどう翻訳されているか (2) 近現代の神道を中心に」報告 
公開日: 2004/1/14
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ミニ・国際シンポジウム「〈神道〉はどう翻訳されているか (2) 近現代の神道を中心に」報告
日時   2003年12月7日(日) 午後1時〜5時
場所   國學院大學120周年記念1号館 1階1101教室
テーマ 「〈神道〉はどう翻訳されているか(2) 近現代の神道を中心に」
発題者 Jean-Pierre Berthon教授
    (フランス、社会科学高等学院日本研究所)
    Inken Prohl講師
    (ドイツ、ベルリン自由大学)
コメンテーター 櫻井治男教授 (皇學館大学)
         Ernst Lokowandt教授 (東洋大学)
司会       井上順孝教授 (國學院大學)
(共催 神道宗教学会)

タイム・スケジュール 
13:00-13:10 趣旨説明
13:10-13:50 発題(1) Inken Prohl氏「イデオロギー的言説 と行為・実践志向的宗教との狭間で―所謂「神道」に関連する概念・カテゴリーの翻訳を巡る諸問題―」
14:00-14:40 発題(2) Jean-Pierre Berthon氏「幕末維新期における千年王国、言葉、エクリチュール―丸山教を中心に―」
15:00-16:00 コメント及び応答
16:00-17:00 自由討議

1. 趣旨
 このシンポジウムは、平成15年9月20日、21日に行われた国際シンポジウム「〈神道〉はどう翻訳されているか」を補足するためのものである。
 9月のシンポジウムでは、「神道古典の部」「国学の部」に分けて充実した議論が展開されたが、近現代の問題を扱うことができなかった。そこで今回は、近現代の〈神道〉の書籍、用語の翻訳の際に生じるさまざまな問題を、ミクロな視点、マクロな視点の双方から論じることを目的とした。
 ここで扱う近現代の〈神道〉には神道系新宗教を含んでいる。日本近代仏教研究において、仏教のリバイバル (信仰復興) 運動としての仏教系新宗教に関する研究が欠かせないのと同様に、神道系新宗教の活動や言説がどのような意味や問題をはらんでいるかという観点は、近現代の神道研究にとって必要なものである。

以上の点を踏まえ、今回のシンポジウムでは、ドイツ、フランスで神道系新宗教を研究している二人の研究者を招いて、概念や用語の翻訳のさいに出会った諸問題を提示してもらう。さらに、国家神道および近現代の神社神道を専門とする二人のコメンテーターからの提起を受けて議論を深めていく。

2. 内容
 Inken Prohl氏の発題「イデオロギー的言説と行為・実践志向的宗教との狭間で―所謂「神道」に関連する概念・カテゴリーの翻訳を巡る諸問題―」は、ドイツの宗教学が神道について主としてプロテスタンティズムの諸概念を用いて記述、分析してきたが、近年これに対して批判的反省が加えられ、より現実に即した用語が採用されつつあるとして、国家神道、神道系新宗教、スピリチュアリティに関する諸概念の翻訳を中心に例をとりあげて発表した。
 Jean-Pierre Berthon氏の発題「幕末維新期における千年王国、言葉、エクリチュール―丸山教を中心に―」は、幕末維新期の世直し運動的な性格の強い神道系新宗教である丸山教の教祖の言葉を中心に、翻訳にまつわる問題を指摘した。
 二人の発題を受けて、櫻井治男氏・Ernst Lokowandt氏がコメントした。櫻井氏はまず、〈神道〉の翻訳という仕事には次の二つの背景があることを指摘した。すなわち、(1)諸外国と接する機会が増え、宗教現象を神道のなかからどのように発見していくかが問題となったこと。超越、回心、改宗、啓示、瞑想といった宗教的諸観念は、それまで神社神道のなかで考えられたことはなく、むしろ新宗教においてとらえられてきた。(2)神道をグローバル化し、海外に紹介しようという要請が生まれてきたこと。しかしそのさい、語彙を直接的に翻訳するのでなく、歴史的な脈絡のなかでの使用の変遷を念頭に置かなければならない、として、そのような注意が必要な具体例に「氏神」、「無格社」などを挙げ、さらにProhl氏・Berthon氏の示した事例についても言及した。
 Lokowandt氏は、西洋語への翻訳にさいしては必然的にキリスト教用語を使わざるを得ず、また一概にキリスト教の特殊な意味に限定して理解されるものでもないので、翻訳というよりむしろ論文のなかでの注記をいかに適切に行うかという問題ではないかと指摘した。また、Lokowandt氏自身が出会った翻訳困難な用語として、「国家神道」、「官幣社」・「国幣社」、「国体」などを挙げた。

 以上の発題・コメントを踏まえてディスカッションが行われた。総じて、〈神道〉の概念・用語の翻訳という仕事が、宗教現象学的な理解を掘り進めるなかで概念を確定するものであることが確認された。たとえば、「信仰」 Glauben という用語をめぐって、初詣でやお祓いなど信仰対象がはっきりしない宗教行動や、個人ではなく祭りなどの集団の営みのなかで信仰の表現がなされるような場合の社会意識も考慮すべきであることが指摘された。その一方で、国学者・神道家のような特定の担い手にとっての信仰はプロテスタンティズムの Glauben に相当するものではないかという指摘も、参加者からなされた。
 そのほか、アカデミックな論争のために導入された Shintos という複数表現が欧米圏の神道研究では当然のように用いられていることなどが紹介された。日本人研究者も、〈神道〉がいかに翻訳されているかということに関心を向け、議論に加わっていくことが今後さらに必要であることを再確認して、議論を閉じた。
 また、このシンポジウムは神道宗教学会との共催で行われたが、外国人10数名を含め、約80名の参加者があった。
(文責:黒崎浩行)

神道・日本文化ミニシンポパネリスト

神道・日本文化ミニシンポ会場

リンク:『神道・日本文化研究国際シンポジウム(第2回) 「〈神道〉はどう翻訳されているか』の刊行

リンク:Encyclopedia of Shinto
 
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