中世神道と中世日本紀との関係解明のための広島県調査


1.実施目的
 近年井上寛司氏により、いわゆる「中世日本紀」が中世的な神道の成立と深い関係にあることが指摘され、注目を集めている。これにより、中世日本紀に関連する典籍のさらなる検討が重要な課題として位置付けられたが、未だ紹介されていない史料も多く存在する。
 しかしながら、第2回総合シンポジウムの準備段階で、阿部泰郎氏(名古屋大学大学院)より、『日本書紀』の注釈書が三原市立中央図書館に所在するとのご教授を得たので、同じく三原市の御調八幡宮に所蔵されている、室町時代中期書写とされる日本紀の聞書とあわせて調査を実施した。

2.調査日
 平成17(2005)年12月11日(日)

3.調査地
 三原市立中央図書館(広島県三原市円一町)
 御調八幡宮(広島県三原市八幡町宮内)

4.調査参加者
 岡田莊司(事業推進担当者)
 加瀬直弥(21世紀研究教育計画嘱託研究員)

5.調査の概要
5-1.三原市立中央図書館所蔵(里村文庫旧蔵)『日本紀講義』(天文9(1540)年写)
 当該書は未翻刻の史料であり、その成立過程なども明らかになっていないが、前述の通り阿部氏のご教授によって、本学図書館所蔵『日本紀聞書』と内容が類似することが判明した。本学所蔵史料の成立背景や、中世日本紀研究のさらなる深化を期すため、原本調査を実施した。
5-2.御調八幡宮所蔵『日本書紀第一聞書』(書写年代不明。後掲書は室町時代中期頃書写とする)
 応永年間(1394〜1427)後期の良遍(比叡山の僧)の日本紀講義をまとめた本書は、すでに山本秀人氏・山本真吾氏によって影印・翻刻ならびに解説がなされていることもあり(鎌倉時代語研究会編『鎌倉時代語研究』武蔵野書院、平成元(1990)年)、今回の調査では、現状の把握と電子データ化に重点を置いた。
 なお、御調八幡宮では、そのほかの史資料などを閲覧する機会を得た。

6.調査で得られた成果と課題
 1でも述べたように、中世日本紀に関する史料の把握自体が、十分なされているとはいいがたい現状の下では、こうした史料を広く収集する必要がある。今回の調査によって、未刊のものも含めた史料の詳細が確認できたことは大きな成果であった。今後もこうした作業を進めていくよう努めたい。
 末尾ながら、阿部泰郎氏、三原市立中央図書館および御調八幡宮の桑原国雄宮司のご厚誼に対し御礼申し上げる。
文責 加瀬 直弥(21世紀研究教育計画嘱託研究員)





日時:  2006/1/24
セクション: グループ2「神道・日本文化の形成と発展の研究」
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