国学院大学
   副専攻「日本語教育(日本語教員養成課程)」の手引き

国学院大学の副専攻「日本語教育(日本語教員養成課程)」の大きな特徴は、共通領域を利用することによってほぼ要卒単位の範囲副専攻「日本語教育(日本語教員養成課程)」修了証が得られるため、教職課程と両立させることができる点です!

                                     2015年4月1日更新

  この頁は、国学院大学の在学生と受験希望者を対象にして説明しています。このため、学外の方には該当しない内容が含まれることをあらかじめご理解願います。

(1)日本語教師の種類

  日本語教師は、公立・私立の小中学校・高校の教師とは異なり、大学の日本語教育の教員から日本語学校の教師、地域のボランティアまで、職業の形態に非常に大きな幅があり、身分の安定性・収入もまた多様です。しかし、グローバル化により国内外での外国人との交流が盛んになり、また、日本の少子高齢化による移民の増加によって日本語教育がますます必要になっています。
  小中高の教職については、現在は少子化のなかで団塊世代の定年退職の後任補充によって採用が続いていますが、一方で、大学・日本語学校における留学生に対する日本語教育だけでなく、小中高においても日本に滞在する外国人子弟に対する日本語教育の必要が生じてきています。小学校や国語・社会・英語…などの教科の教員と別に日本語教師を採用すべきという意見もありますが、自治体の財政難の状況を考慮すると、今後の教員採用に向けて教科の授業と日本語教育の両方に対応できるよう備える(教職免許と副専攻修了証など)ことも生き残りの戦略として有効であると思われます。
  また海外で就職する際にも、日本語教師は大きな選択肢の一つです。英語・中国語・韓国語・仏語・独語などの語学教師を目指す場合も、場面に応じて日本語教師を兼ねることもあり得ます。語学教師と日本語教師とは表裏一体の関係であるともいえます。外国語教育から日本語教育に転ずる場合もあり得ます。リストラなどいざという場合の再就職先となる場合も考えられます。留学生が母国など(日本でも大学の留学生センターなど求人の時に国籍を問わない事例もあります)で日本語教師の求人に応募する際に活用できる場合もあります。

(2)日本語教師になる方法

  日本語教師には、教員免許などのような国や自治体などの公的機関による認定や国家試験による統一的な資格認定の制度はありません。海外やボランティアなど、場合によっては、日本語を母語とするというだけで日本語教師として採用される場合もあります。しかし、一般的には、以下に述べるように文部省、ついで文化庁による日本語教師の資格に関する文書が示され、現在では各種日本教育機関で日本語教師の採用をする際に条件・資格を示す場合の基準となっています。   日本語教師の資格については、1985年、文部省(現在の文部科学省)の日本語教育施策の推進に関する調査会から出された報告「日本語教員の養成等について」(文科省のHPから)に示された「日本語教員養成のための標準的な教育内容」の「日本語教育施設の運営に関する基準について」に、
  日本語教育施設の教員は次の各号の一に該当するものとする。
  1 大学(短期大学を除く)において日本語教育に関する主専攻(日本語教育科目45単位以上)を修了し、卒業した者。
  2 大学(短期大学を除く)において日本語教育に関する科目を26単位以上修得し卒業した者。(副専攻)
  3 「日本語教育能力検定試験」に合格した者
と定められ、これに準じて大学・短大・専門学校等で日本語教師の養成がなされてきました。次いで、2000年3月、大学改革や日本語教育状況の変化に対応させて、文化庁の日本語教員の養成に関する調査研究協力者会議から出された「日本語教育のための教員養成について」(文化庁のHPから)において示された「日本語教員養成における教育内容について」のなかで、上記1985年の文書における主専攻・副専攻の区別が廃止され、3領域5区分からなる「新たに示す教育内容」が示されました(文書の本文は文化庁のHP参照)。

 国学院大学の副専攻「日本語教育(日本語教員養成課程)」は上記2に該当し、修了証も発行されるので、求人の際に使用することができます。この主専攻・副専攻の区別は、上記2000年の文書によって廃止されましたが、これまでの経緯から、日本語教師の募集にあたって資格の欄に「日本語教育を主専攻・副専攻とする者」などと示す例がまだ多いようです。日本語教員の求人の際に示す条件は統一されたものはなく、
  (1)日本語学校など
  (2)大学・短大など
の求人の条件は、各教育機関によって相違しますが、(1)では、特に、
  @大学・短大で主専攻・副専攻で日本語教育・日本語教員養成課程を修めた者。
  A日本語教育の経験がある者。
  B「日本語教育能力検定試験」に合格した者。
  C(海外の場合など)外国語に堪能である者。
などを掲げる場合が多く、このうちの全ての条件を必要とする場合もあり、また、いずれか一つまたは複数の条件があてはまればよいとする場合もあります。
 (2)では、(1)の条件に加えて(逆に、BCが条件にない場合もあります)、
  D大学院修士課程(または博士課程)修了以上の者。
  E博士号を取得した者。(海外や大学院担当者などの募集に目立つ)
  F日本語教育に関する研究業績(著書・論文・教材)を有する者。
  G大学での日本語教育の経験を有する者。
などの条件を示す場合が多いようです。(2)では、特にDFを必要条件とする場合が多いようです。なお、(2)では、「日本語学・日本語教育学を専門分野とする者」という条件が最も多いようですが、「専門分野に加えて日本語教育も担当できる者」(例えば、物理学+日本語教育、経済学+日本語教育など)とする事例もみられます。従って、将来、大学院に進学して日本語教育学以外の分野の研究職を目指す場合でも学部のうちに副専攻で日本語教育を修めておくことが有効である場合が考えられます。学部新入生で大学院進学を目指す人は、博士号を取得する9年後の日本社会や世界での専門分野の需要を常に見極めることが大事であるといえます。国学院大学では、2009年4月から大学院文学研究科に「高度国語・日本語教育コース」が開設されました。

 なお、Cの外国語の能力については、語学が得意であるのにこしたことはありませんが、語学力が問われない場合もあります。例えば、初級日本語を現地の日本語教師が教えて日本人教師はネイティブとして上級日本語を担当する、あるいは外国語を介さないで日本語のみを用いて教える場合などです。これに対して、大学の留学生センターなどの教員公募では、例えば英語で日本語・日本文化を教えるのみならず英語で留学生の生活指導や相談にのる能力(TOEFLやTOEIICの点数で示す)を求められることが多いようです。外国語の種類は、英語・中国語・韓国語…などが得意であると有利な場合が多いようですが、示される条件はこれらのいずれか1カ国語であったり、英語+その他の言語であったり多様です。また、日系人の日本での就労に門戸を開いているのでポルトガル語(ブラジル語)も有望です。ロシアはロシア語、タイなど東南アジア・南アジアでは英語ができることが望ましいといえます。いずれにしても、学部で学ぶ必修外国語、選択必修・選択外国語を好みや目的に応じて磨いておくと選択肢が広がるでしょう。なお、この他、明るく陽気な性格であることを条件とする場合もあります。 日本語教師の具体的な求人情報 については、インターネットで、(1)はIJEC国際日本語研修協会のHPの「日本語教師国内就職情報」「日本村Nihonnmura」など、(2)は日本語教育学会の「教師募集」、JST(独立行政法人科学技術振興機構)の「研究者人材データベースJREC-IN」、アメリカは「ATJ(全米日本語教師会)ATJ Job Line」などで検索して参照することができるので、日頃から公募条件に合った資格や資質を身につけておくことが重要です。

   国学院大学では、副専攻「日本語教育(日本語教員養成課程)」を履修することでほぼ要卒単位の範囲で(学部学科専攻によってはカリキュラムの都合上、2〜4単位ほど超過する場合もあります)資格の一つが得られることになりますが、(1)(2)の日本語教師へ就職をめざす場合は、さらに下記「「日本語教育能力検定試験」」の合格を目指し、また、独立行政法人国立国語研究所・日本語教育学会、あるいは、凡人社・アルクなど日本語教育関係の出版社等など様々な研修会に参加して日本語教育の研修歴をつけ、機会があれば自治体を始めとする各種ボランティア(形態は様々、証明書を発行する場合もあります)などで日本語教育歴をつける(履歴書に書けるように)ことが望ましいといえます。国学院大学では、2006年度から8月に台湾・南台科技大学で日本語教育実習を実施しています。海外青年協力隊の日本語教育もあります。

(3)副専攻「日本語教育(日本語教員養成課程)」のカリキュラム

  副専攻「日本語教育(日本語教員養成課程)」のカリキュラムは、国学院大学入学時に配布される各年度の『履修要項』に一覧表が掲げてあり、これに従って28単位以上を取得すれば、卒業証書と一緒に副専攻「日本語教育(日本語教員養成課程)修了証」が授与されます。
  副専攻の登録は1年次の履修登録時からできます。2年次以降にも4月の履修登録時に登録・変更することができるので、学士編入や短期大学から3年次に編入する場合も、登録して単位を取得すれば、修了証が授与されます(『履修要項』を熟読し、国学院大学のHPの「授業・学生生活」の頁をよく確認してください)。

  国学院大学の副専攻「日本語教育(日本語教員養成課程)」のカリキュラムでは、日本語学に関する基礎知識を「日本語学概論TU」「日本語学TU」(日本文学科は「日本語学概説」)で概説的に学び、音韻・アクセント等については「日本語音声学」、言語学については「言語学概論」で詳しく学びます。日本語教育の実践に関する術語・概念は「日本語教授法TU」「日本語教育研究TU」で学びます。3年次開講科目の「日本語語法研究TU」では伝統的な学校文法とは異なる日本語教育で用いられる文法理論の術語・概念を扱います。外国人学習者の多くが日本語教育文法で日本語を学習するのに対して、日本人は「国語科」でこれとは異なる学校文法を学習するだけなので、初めて日本語教科書を開いた時に驚かないように受講しておくことが大事です。「◇生活と文化」(「言語と文化」)のうちの「日本語教育の歴史」では日本語教育史を扱います。シラバスの頁はここから

(4)日本語教育能力検定試験の出題分野との対応

  「日本語教育能力検定試験」は、財団法人日本国際教育支援協会が実施して社団法人日本語教育学会が認定するもので、1987年度に始まりましたが、上記2000年の文書を承けて、2003年度の試験から出題範囲および構成が大きく変わり、日本語自体に関する知識だけでなく日本語教育に関する幅広い知識(3領域5区分)が出題されるようになりました。試験の実施要項は出願受付期間が2010年度は6月21日(月)から8月9日(月)まで(予定)、試験日が2010年10月24日(日)です(JEES日本国際教育支援協会のホームページを参照)。受験資格に制限は特にないので、在学中に受験して合格を目指すこともできます。
 受験する場合には過去問題シラバスを見比べて履修科目を選ぶとよいでしょう。試験の過去問題は日本国際教育支援協会の著作・編集で凡人社(2004年度以降)から解答付きで出版(例年4月頃発売、1300〜1400円)されています。日本語教育に関する時事的な設問も目立つので、日本語教育関係の雑誌「日本語」(アルク、月刊)の特集・記事をこまめに読み、また、日本語教育学会の大会(年2回開催)のテーマ(機関誌「日本語教育」に要旨・論文を掲載)などをチェックして、日本語教育の分野で話題になっている事項に注意するとよいでしょう。

 日本語教育関連の学会については、社団法人日本語教育学会を始め、日本語教育史研究会・日本言語政策学会・社会言語科学会・日本語学会などがあり、各学会のホームページからも大会・例会の開催日程を始めさまざまな情報を得ることができます。

目 次
ひとくちメモ

2009年4月新設の人間開発学部の皆さんは、たまプラーザキャンパスでの授業後、渋谷キャンパスで夜開講の科目を履修することで「日本語教育(日本語教員養成課程)」の単位を修得し、学校現場で急増している外国人児童の教育に対応することができます。