第7章 第6節 非公式構造の測定方法【第7章の目次へ戻る】

 非公式構造とは、組織成員間の相互行為を通じて形成される組織成員の組織やその下位単位への感情的結合や規範的統合のことであり、本調査では、組織成員のカセクシス的な志向の対象となり感情的結合や規範的統合の単位となる社会単位として、組織自体である会社、職場レベルの小集団である同僚、職務遂行のための役割のセットである仕事、および、労働組合の四つを設定した。したがって、組織への統合とは、狭義には、会社への統合のことを意味する。
 本調査では、それぞれの社会単位について非公式構造の包括的尺度として統合(integration)を、その下位尺度として動員(mobilization)と支持(support)の二つを設定した。動員とは、ある社会単位が持つ自発的な貢献を生み出す能力、支持とは、社会単位が供給する報酬から生まれる感情的な誘因、と定義される。ここで、統合とは、組織成員が組織の目標や価値を規範として内面化し、組織の目標や価値と組織成員個人の欲求や価値とが一致している程度が高いことを指す。
 本調査では、動員は「個人調査」において測定した個人レベルでのコミットメント、すなわち、ある社会単位に対して貢献しようとする意欲や忠誠心、を部門単位でアグリゲートすることによって操作化した。また、支持は、「個人調査」において測定した個人レベルでの満足、すなわち、ある社会単位から得られる報酬に対する欲求充足、を部門単位でアグリゲートすることによって操作化した。そして、統合は、コミットメントと満足との単純平均によって算出した帰属、すなわち、ある社会単位への一体感、を部門単位でアグリゲートすることによって操作化した。
 コミットメントおよび満足については、各社会単位のそれぞれについて4項目ずつの計16項目からなる、当該の社会単位への態度を記述した質問に対して、「そう思う」という回答に5点、「かなりあてはまる」に4点、「どちらともいえない」に3点、「あまりあてはまらない」に2点、「そうは思わない」に1点を与える5点尺度により測定した。

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