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単位体と構成素 (in わかりやすいオートポイエーシス(自己生産))

 自己生産という概念を社会現象にあてはめるならば「コミュニケーションがコミュニケーションを生む」、経済現象にあてはめるならば「売買が売買を生む」ことになり、「なんだ!当たり前のことを小難しい言葉で表現しているだけではないか!」と言われかねない。

1 単位体と構成素

 「システムを構成する要素を構成素(components)、環境かつ他の単位体から区別することができるシステムを単位体(unity)と定義する。例えば、生命システムの単位体とは、1匹の動物や1本の木のことであり、1匹の動物の構成素である器官や細胞ではない」(小木曽(2007:26)。さて、小木曽(2007:26)は、生物の再生産、すなわち生物が子どもを生み出すことを自己生産に含めようとして、自己生産に「システムと同種の単位体を生産することを指して単位体自己生産(self production of unity)と分類」してしまった。しかし、生命システムにとっての子どもは他者であるために、生物が子どもを生み出すことを自己生産に含めるのは適切ではなかった。したがって、小木曽(2007:26)の構成素自己生産と単位体自己生産という自己生産の分類は誤りであり、自己生産は自己の構成素を生産する構成素自己生産(self production of component)に限定される。

2 構成素は構成素を生産することができない

 単位体である生命システムはその構成素である自己の細胞を生産する。しかし、個々の細胞単独では細胞を生産することはできない。例えば、皮膚の細胞が細胞分裂により新たな皮膚の細胞を生産しているように見えるかもしれない。しかし、新たな皮膚の細胞の材料となるタンパク質は、単位体である生命システムの摂食、消化、吸収などの作動があって供給されるものである。皮膚の細胞単独では新たな皮膚の細胞を生産することはできない。

 コンビニエンスストアでの買い物の例【へ】での、購買者が「プリンを買いたい」という意志を販売者に伝達するコミュニケーションに継起して、販売者が「プリンを売る」意志を購買者に伝達するコミュニケーションが開始されるが、これらのコミュニケーションが作動するのは生命システム・経済システム・文化システムといった他の自己生産システムにより社会システムが規定されることを通じてである。つまり、コミュニケーション単独では継起するコミュニケーションを生産することはできない。

§参考文献§

Copyright by 2013 Ogiso Michio (小木曽道夫), Revised on 28. Oct. 2013
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