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(2.優先して採用する資格(問4)つづき)

2-3.コンピュータ系の資格(問4(3))

塩崎 悠子

2-3-1.単純集計

 問4では「貴社では、大学の文系学部の新卒者を採用する際に、つぎの資格を持っていれば優先して採用しますか」と質問した。この節では14種類の(3)コンピュータ系の資格についての分析を行う。
 【【単純集計】の結果は、まず、「1.この資格を取得していなければ採用しない」を選択した企業はほとんど無く、必ず取得しなければならない資格はほとんどない事になる。
 つぎに、「4.関係ない」という選択肢は、この度数が低いものほど採用に関して重要視されていると言える。したがって「4.関係ない」という選択肢の%(相対度数)に注目し、この度数が低い順、すなわち採用に関して重要視されている順に14種類の資格を並べ替えて分析を行う。

 一番度数が低い、すなわち最も関係がある資格は5)上級システムアドミニストレータ試験(53.8%)であった。この資格は「2.優先して採用する」という選択肢において1位の度数(9.3%)であると同時に、「3. 取得していれば採用に有利」という選択肢でも2位(31.9%)である。故に、上級システムアドミニストレータ試験はこれら14個の資格のうち、最も採用の際に重視されていると言えよう。

 「4.関係ない」という選択肢でつぎに度数の少ない項目は7)初級システムアドミニストレータ試験(56%)であった。この資格は「2.優先して採用する」というの選択肢においては6.0%と低い結果であったが、「3.取得していれば採用に有利」では1位(33.0%)となっており、総じては、やはり高い関心を持たれている。1,2位をシステムアドミニストレータ試験の上級・初級が独占している事で、単に「パソコンを使える」「ITの知識がある」ということにとどまらず、ITを駆使して業務を改善していくリーダー的役割となることが評価されている。多くの企業においてパソコンが1人1台与えられているような現在では、あらゆる業種の企業とその各部署において役に立つ知識なのだろう。

 3番目に「4.関係ない」の度数が低いものは6)情報セキュリティアドミニストレータ試験 (56.6%)であった。「2.優先して採用する」の選択肢でも3位の8.8%、3.取得していれば採用に有利、も同様に3位で、29.7%であった。これも、システムアドミニスターと同じく情報漏洩防止のセキュリティ対策へのニーズが高まっていく中、情報セキュリティ知識と技術を持った技術者が求められているのだろう。

 4位の資格は2)基本情報技術者試験 (57.7%)であり、「2.優先して採用する」は6位の7.7%だが、「3.取得していれば採用に有利」では3位の29.7%であり、SEやプログラマーを目指す人の初歩的な資格であるため、比較的重視されているといえるだろう。

 5位は3)システムアナリスト試験(58.8%)で、「2.優先して採用する」では6位(7.7%)であり、「3.取得していれば有利」では28.6%の5位であり、全体的に5〜6位とまとまった結果であった。6位のシステム監査技術と並び最難関とも呼ばれるが、難易度と就職に優先、有利かはあまり関係ないことがわかる。

 6位は1)アプリケーションエンジニア試験(59.9%)であり、「2.優先して採用する」では11位(7.1%)と低めだが、「3.取得していれば有利」では7位の26.9%であった。

 同率6位だったのは4)システム監査技術者試験(59.9%)であった。「2.優先して採用する」では12位(6.6%)だが、「3.取得していれば有利」では6位(28%) となり、上記のアプリケーションエンジニア試験と同様の結果となった。このことから、これら2つの資格は採用に関し、優先されることは希だが、持っていれば有利となる可能性が高いといえる。

 つぎに低かった8位は8)ソフトウェア開発技術者試験(60.4%)であった。「2.優先して採用」では同率一位の9.3%であるが、「3.取得していれば有利」では9位の26.3%とバラツキのある結果となった。同じく「4.関係ない」で8位の13)テクニカルエンジニア試験(情報セキュリティ)と11位の10)テクニカルエンジニア試験(システム管理)においても「2.優先して採用」ではそれぞれ同率4位(8.2%)であるが、「3.取得していれば有利」では11位(25.8%)と12位(25.3%)という結果であった。これらは、上記の資格とは反対に、採用の際に取得していれば優先される度合いが高いと思われる。

 「4.関係ない」の度数の低さで9位から12位までを10)〜13)テクニカルエンジニアの4つの資格が占め、この傾向も「2.優先して採用」の率が高く、「3,取得していれば有利」は低めと同様であった。このことから、これらテクニカルエンジニアの資格は情報セキュリティ、ネットワーク、システム管理、データベースにおいては内容に関わらず、包括的に求められており、その内容で大きな差は出ないといえる。

 13位の14)プロジェクトマネージャ試験(62.6%)は「2.優先して採用」では同率6位(7.7%)ではあったが、「3.取得していれば有利」で13位(24.7%)と低い評価であった。SE、プログラマーをまとめ、システムが稼動するまでの多岐にわたる総合的な管理を行うため難度が高く、文系の大学生には不向きだと思われているのかもしれない。

 14位と、これらの資格で最下位となったのは9)テクニカルエンジニア試験(エンベデッドシステム)であり、64.3%であった。エンベデッドシステムの開発工程の計画・管理の能力を必要とするため新卒者が取得している事は求められていないのだろう。上記のテクニカルエンジニア試験とは異なり、「2.優先して用」では13位(6,6%)、「3.取得していれば有利」では最下位の14位(24.2%)と総じて軽視されており、テクニカルエンジニア資格としても、全体の評価としても、この資格の取得は採用に結びつきがたいといえるだろう。

2-3-2.因子分析

 コンピュータ系の14種類の資格の相互関係を探索するために因子分析を行ったところ(表2-3-1)、固有値が1.0以上の因子が1つしか析出されず、因子負荷行列の回転を行うことができないため、実質的には主成分分析と同じ結果となった。因子負荷量は0.848〜0.970の範囲といずれも強い正の負荷を示し、些少な差しか認められなかった。この結果から、ある資格を重視している企業では他の資格も重視しているが、ある資格を軽視している企業では他の資格も軽視していることが明らかになった。

Copyright 2007, Shiozaki Yuuko

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