結論 近代組織からの自己革新【本書の目次へ戻る】

 結論・第9章では、第3部での分析結果に基づく結論と考察を行う。
 自己組織化モデルは、第3部での分析結果を理論的に説明し得るために、既存の組織理論と比べて外的妥当性かつ納得性の点において優れていると結論できよう。また、自己組織化モデルの導入によって、従来は、環境や公式構造はコンティンジェンシー理論に、非公式構造はヒューマン・リレーションズ・アプローチによってそれぞれ別個に説明されてきたものを統合的な理論によって説明することが可能になろう。
 組織構造の三つの次元の独立性が認められたことは、実際の組織においては、官僚制というゲゼルシャフトと非公式的なゲマインシャフト的要素を帯びたものが異なる次元として並存していることを意味している。また、知識集約的組織の生産性向上の要因についての分析結果は、管理者がデザインする公式構造よりも、創発的構造や非公式構造に示される組織成員ひとりひとりが創り出していく組織風土の方が重要である、という実践的結論を包含しており、このことは、昇進などの仕事に外在する報酬ではなく、仕事自体から得られる面白さや喜びといった仕事に内在する報奨を志向するような価値志向の転換が現実的であることを示唆していよう。
官僚制組織や「日本的経営」に代表される近代の原理は、工業生産の量的拡大や効率追求には成功したのであったが、人間をあたかも予測可能な機械であるかのように扱ったために、組織のゆらぎを発生させる個人の多様性や自由を抑圧するといったひずみを生んだのであったが、しかし、自己組織化モデルは、個人の管理や抑圧の源泉となってきた組織のなかから、工業化や近代化を超克し合理化の魔法から人間を解き放つ原理を見いだす可能性を秘めているのではないだろうか。

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