廣池千九郎記念館インターンシップ実施報告

博物館学コース博士課程前期1年 松林有紀

廣池千九郎記念館正面廣池千九郎記念館正面

 大学院GPの専門実習・特殊実習の一環である学外のインターンシップを、8月8日から15日間、千葉県にある麗澤大学付属博物館、廣池千九郎記念館で実施させて頂きました。
 廣池千九郎記念館(以下記念館)は、麗澤大学の創立者であり、総合人間学「モラロジー(道徳科学)」を創建した法学博士廣池千九郎を顕彰した人物記念館で、廣池博士の生涯・業績を遺品や遺稿、映像、パネル等を用いて展示、紹介しています。記念館での主な資料は、廣池博士直筆の原稿や遺品であり、一見展示全体が地味になってしまいそうですが、ガラス張りにした記念館入口の壁や、特殊なライトを使い漢詩を写し出す展示等、見る人の注意を喚起する工夫が随所に施されていました。また、廣池博士の膨大な蔵書が収蔵庫に収められている様子を、展示室の覗き窓から見ることが出来、保存と展示の両立を実現させていたところも非常に印象的でした。

廣池千九郎記念館入口廣池千九郎記念館入口

特殊ライトによる展示特殊ライトによる展示

覗き窓覗き窓

遺墨目録の作成遺墨目録の作成

 インターンシップ期間中に行った主な業務は、酸性紙の取替え作業や遺墨目録の作成、遺品の整理などです。

 酸性紙の取替え作業は、廣池博士直筆の古文書類を保存する際に保護紙として使われている酸性紙を、原稿(和紙)と密着させたままにしておくと、酸が和紙へ移行し劣化を招いてしまうため中性紙に取り替える、というものです。取り扱った古文書は、廣池博士の原稿や、直筆の地図、手紙等でした。脆弱な紙資料を、直接扱う神経を使う根気のいる作業でしたが、大きな事故も無く、無事に目標の枚数を取替えることが出来ました。

 遺墨目録の作成では、目録に記載されている遺墨のデータ(作品名、材質、制作年月日、落款の文字、寸法)をパソコンに入力しました。速さではなく、正確さを求められる作業なので、じっくりと目録に目を通し、慎重に作業を進めていきました。データ入力を通して、少しではありますが廣池博士の書いた漢文についての知識を深める事が出来たと思います。

収蔵庫内での遺品整理収蔵庫内での遺品整理

 また、収蔵庫に収められている廣池博士の遺品類、蔵書の整理も手伝わせて頂きました。収蔵庫には、廣池博士が使っていたとされる布団や家具、衣類といった身の回りの生活用品など、廣池博士の生前の生活を克明に再現出来るのではないかと思うほど、ありとあらゆるものが残されています。その膨大な資料をどのように整理し収納するか学芸員の方と話し合うところから始め、一つ一つの資料を目録と照らし合わせ、整理整頓していきました。作業をしながら、資料を保存する際に留意する点を丁寧に指導して頂き、何十年も先を見越した上で資料を取り扱う事の難しさを実感しました。学芸員の方の「廣池千九郎の軌跡を残すために尽力した、側近の方たちと同じように愛情を持って資料に接していきたい」という想いは資料の保存状態に如実に現われていたと思います。
 これらの他にも、「モラロジー(道徳科学)」や「アーカイブズ」、「酸性紙問題」についての講義も行って下さり、大変充実した内容の濃い15日間を過ごせました。
 インターンシップを通して、博物館の現場の裏側を知ると共に、今の自分に足りない部分、伸ばしていくべきところを明確にすることが出来たので、この経験を生かし、今後自分の研究、勉強に励んでいきたいと思います。
 最後になりましたが、インターンシップという貴重な機会を与えて下さった國學院大学大学院の先生方、受け入れて下さった廣池千九郎記念館の職員の方々に心より感謝し御礼申し上げます。


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