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経済学科
経済学科のコース説明経済学科は、経済と経済学の基礎及びそれを土台として専門・応用分野を学ぶ学科であり、新設された経済ネットワーキング学科と産業消費情報学科の基礎となる学科でもあります。
今日、世界経済は大変な激動期にあります。東西冷戦の終焉とそれに伴う社会主義体制の崩壊でさえ今や過去のことになろうとしています。永らく経済力の衰退や「双子の赤字」に悩されていたアメリカはみごとな復活を遂げ、日本やEUの停迷を尻目に長期にわたる好景気を謳歌する一方、EUは高失業にあえぎ、数年前まで「ジャパン・アズ・ナンバー1」ともてはやされた日本も、バブルの崩壊によって深刻な危機に直面しています。企業の海外移転に伴う「産業の空洞化」の進展や、高齢化社会への移行が進む中で、日本経済や社会システムのあり方をこの先どのように変えていくのかが問われようとしています。片やアジアに目を転じると、東アジア諸国は目ざましい経済成長を遂げており、中国やインド、ベトナムといった国々もこれに加わろうとしています。要するに、世界の至る所で急激な変化が始まっているのです。
勿論、変革を迫られているのは、経済そのものばかりではありません。時代の要請に従って、経済学もまた変革を迫られています。環境問題や福祉・高齢化問題など、これまで経済学が等閑視してきた分野も、現在では重要な研究分野となっています。しかし、経済学は新しい時代の要請に対応しなければならないといっても、これまでに培われた歴史や伝統を全く無視して進むことはできません。その体系性や完成度の高さからして「社会科学の女王」と呼ばれる経済学には、かのアダム・スミス以来200年以上にわたる長い歴史と伝統があります。経験科学としての経済学には、自然科学のように一夜にして既存の体系をひっくり返すような大発見は登場しようもありませんが、その代わり過去の歴史や経験の積み重ねが大きくものをいうのです。イギリスの著名な経済学者マーシャルによれば、「経済学の課題は、現代を過去に照らしながら未来のために分析することにある」といいます。その意味で、経済学科に所属する学生諸君は勿論のこと、応用度の高い分野を専攻する経済ネットワーキング学科や産業消費情報学科の学生諸君にも、当経済学科で最新の経済情報や経済学の動向と同時に、過去の歴史や経済学の基礎、基本的な分析ツールもしっかり学んでいただきたいと思います。
既に皆さんの中にはご存知の方もいるかもしれませんが、日本の経済学には、大きく分けて「近代経済学」と「マルクス経済学」と呼ばれる二つの潮流があります。勿論、両者とも現実の経済現象を分析対象としている点では根本的な違いはありませんが、そのアプローチの仕方には大きな違いがあります。敢えて誤解をおそれずにいえば、前者は数量的な手法がメインであるのに対して、後者はどちらかというと制度や歴史、構造分析が中心となります。いうまでもなく、経済現象の分析には両方の視点が必要であり「近代経済学」と「マルクス経済学」の両方のアプローチを身につけることによって、経済現象に関するより多面的な理解が可能になります。勿論、どちらか一方だけを選択することも可能です。経済学科では経済と経済学に関するしっかりとした基本的知識と教養、さらには高度な専門性の習熟を通じて将来実社会で幅広く活躍できる人材の育成を目指しています。
以下この学科に設けられている4つのコースについて説明しましょう。
だんだん若くなくなるにつれて、「最近の若いヤツらは…」ということばを耳にするようになりました。たとえば会社に勤める友人に会うとこんなぐあいです。「‘金利が下がってきましたから株価はあがりますね’と言うから‘どうしてだ?’とちょっと問い詰めると、答えられなくて‘新聞にそう書いてあるじゃあないですか!’とふくれる。」…‥「知識だけは一人前だが使いものにならないヤツばっかりだ。大学で何を教えてるんだ。」…「論理的思考をマヒさせる詰め込み教育、○×教育が悪いんだ。」てなぐあいです。「そう言う自分もマージャンばっかりしてたじゃないか。同じように○×教育で育ったんじゃないか。自分のこと棚に上げてよく言うよ。」と思いつつ、「このごろ理屈をこねるの嫌いな学生が多いなあ。」とうなずいてしまうのです。
経済の問題に限りませんが、「分析」するということは、理屈をこねるということですから、理屈ぎらいではすみません。経済学科では、専門基礎科目と学科基幹科目において、経済分析の入門つまり理屈のこねかたの初歩をおしえますが、とくに、もっと理屈をこねるのが好きになりたい、上手になって将来にそなえたい、と思われるかたは、このコースでより深く勉強できます。
理屈を考えるとき、まったく白紙の状態から考えようとしてもむりです。理屈を考えるための枠組みが必要となります。それが理論ということになります。現在、この枠組みには、大きく分けて2種類のものがあります。ひとつは「マルクス経済学」と呼ばれ、もうひとつは「近代経済学」の名で呼ばれます。財政、金融、国際経済といった具体的な分野での分析でも、これらふたつの枠組みの両方が用いられています。大学の学部の段階では、これらの両方についてある程度勉強する必要があります。このコースの専門教育科目について履修モデルのひとつを用意しましたので、参考にしてください。
このモデルは、2つの枠組みをまんべんなく学びたいという人のためのものです。どちらか一方に重点を置きたい、あるいは、ある特定の応用分野をもう少し深く理論的に勉強したい、と思われるかたは、年次主任の先生や講義を受けている先生たちに、どんどん質問をぶつけて自分なりの履修プランを作りあげてください。
またとくに注意していただきたいのですが、専門基礎科目、学科基幹科目および若干の専門応用科目といった、われわれが1年と2年でとるべきだと考えている科目は、後の専門的な勉強の前提として必要となる基礎的知識やスキルを身につけるためのものですから、1年と2年でちゃんと履修するようにしてください。
「温故知新」(昔のことをたずね求めて、そこから新しい見解・知識を得ること)という言葉がありますが、「歴史と現代社会」コースは、経済もしくは経済学の分野で同じ試みをしようというものです。現代の社会は日本に限らず様々な問題に直面していますが、過去の歴史をたずね、先人達がどのような問題と直面し、どのようにしてこれを克服しようとしてきたかを知ることによって、現代社会の抱える問題の解決方法が見つかるかもしれません。
もっとも、そんな難しい理屈づけなんかを必要としないで、西洋社会の歴史や、近代もしくは近世日本社会の歴史を知りたい人にとっても当コースはお勧めです。専門教育科目についての履修モデルからわかるように、歴史関係の講義科目は1年次前期から4年次後期までまんべんなく割り振られており、日本と西洋(ヨーロッパ)のどちらの関係の講義も聞くことができます。
やや詳しく説明すると、1、2年次では、経済史や思想史の基礎、ならびに経済学の基礎や歴史について学ぶことになっています。外書購読Iや歴史関係の先生によって開かれる経済演習Bでは、経済史や経済学の古典にふれることもできます。また、1、2年通してコンピュータ関連の科目もとることができるので、3、4年になってコンピュータを使った歴史の数量分析なんかにトライするのはいかがでしょうか?
3、4年次では、1、2年次で身につけた知識を基礎にいよいよ専門応用科目を勉強することになります。西洋経済や日本経済、経営や労働、国際関係など様々な分野の歴史について専門的に学習することになります。もちろん、3、4年次を通して専門演習(いわゆるゼミ)が開かれており、各先生の指導の下で皆さんの関心のあるテーマについてより本格的な勉強をすることが可能です。教員紹介のページを読めばおわかりのように、幸い経済学科には歴史を専門に研究されている先生方がたくさんいらっしゃいます。経済史といわず歴史そのものにどっぷり漬かって見たい人は文学部の 史学科の講義を受講することもできます。
「歴史と現代社会」コースは歴史に関心・興味のある皆さんの期待をきっと満たしてくれると思います。
「財政と金融」と聞くと、ひょっとして皆さんは難しくて近寄りがたい印象を持つかもしれません。しかし、財政と金融は国家にとって最も重要な政策領域で、かつ経済の中心をなす分野でもあります。ちまたでは金融機関の救済のために財政資金の投入が問題となっていることをご存知ですか。すなわち、バブルの崩壊によって大量の不良債権を抱え、経営危機に直面している金融機関を救うために多額の公的資金の導入(要するに不良債権の処理に税金を使うこと)が予定され、それが大問題になっているというわけです。こうしたケースはほんの一例ですが、財政と金融という問題は、皆さんの日常生活とも深く結びついているのです。
むろん財政と金融といってもそれがカバーする領域はまことに広いものがあります。現在世間の注目を集めている大蔵省には、予算、税金、財政投融資、通貨、金融(銀行や信託、保険)、外国為替、証券取引といった部署があり、大蔵省は日本最大、最強の官庁といわれていることは皆さんもご存じでしょう。経済学科の4つのコースの中で「財政と金融コース」が果たして最強であるかどうかはわかりませんが、上述のような領域が、皆さんが「財政と金融」コースで学ぶことができる内容です。履修モデル
また、「財政と金融」コースでは、マクロ経済学やミクロ経済学、金融論や通貨・信用論、財政学などの経済理論についてしっかり学んでもらうと同時に、様々な専門用語や専門知識を身につけることができるよう配慮されています。今や企業が望む人材はゼネラリストではなくスペシャリストであるといわれていますが、「財政と金融」コースでは財政と金融に関するそうしたスペシャリストの育成を目指しています。
皆さんは産業構造と云う言葉を知っているでしょう。簡単に云うと、一国の経済、例えば日本経済がどのような産業でできているのかを示すものです。ご承知のように江戸時代は農業が産業構造の中心を占め、そのほかにみるべき産業はほとんどありませんでした。しかし、明治に入ると西欧からの新産業の導入が相次ぎ産業構造は大きく変わりました。戦後においてはさらに経済発展が進み、今では産業構造は製造業に代わってサービス産業が中心を占めるに至っています。
このように、皆さんが経済発展を勉強しようとする場合、まずは産業の移り変わりを知る必要があります。さらには、そもそも「経済」と云うものをより具体的に、現実的に理解するためには、「産業」の理解を欠くことはできません。 同様に、特に現代の「経済」を知る上においては、国際的な視点を欠かすわけにはいきません。既に世界の先進国の間では、色々な「モノ」の取引と同様に、「カネ」の取引も原則何の規制もなく自由に行われています。そして、世界はますます一体化し、個々の国々の経済の動きが、世界全体の経済に少なからざる影響を与えるようになっています。したがって、例えば日本経済を考える際には、世界経済についても考えざるを得なくなっているのです。
以上のような状況を踏まえて、この「産業と国際社会」コースは、産業的な視点と国際的な視点を特に重視しながら経済を勉強していこうというコースなのです。
カリキュラム的には、「産業連関分析」、「産業政策」、「中小企業論」、「都市の経済」、「高齢化社会と社会保障」、「国際経済II」、「国際政治」など、これからの産業の在り方や国際化の進展の方向などを考える際に欠かせない科目がこの学科独自の指定科目として組み込まれています。履修モデル