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3−2 重視している広告媒体(10、問9)

福原 郁也

 

 ここでは広告媒体の相違に焦点を当てて分析を進めていくことにしたい。

【全体の傾向】テレビはほとんど重視されておらず、「ほとんど重視していない」が49.1%にのぼる【単純集計】。インターネットはかなり重視されていて、「かなり重視している」が43.2%あった。テレビは費用がかかる。それに対してインターネットは費用も安く、また効果的であると思われる。現代において、有力企業がホームページを持たないことは時代に乗り遅れている。経営戦略は時代の流れをつかむことが大切であるので、ホームページを持たない企業は生き残れないと言えるだろう。そういった点でもインターネットの重要視の理由が挙げられる。

 

【広告媒体別視点】まずはテレビについて、企業規模別に判断すると、「ほとんど重視していない」は、250499人が61.9%、250人未満が53.7%、1000人以上が27.3%であった。(表3−2−1)。「非常に重視している」は500999人が10.4%、1000人以上で9.1%、 250人未満で5.6%、 250499人で1.6%であった。テレビはやはり費用の問題がある。規模が大きいほど重要視は高いが、規模が小さいとほとんど重視されなくなる。

 

業種別に判断すると、テレビはとりわけ素材では65.9%が「ほとんど重視していない」と回答していた(表3−2−2)。素材は主な相手先が一般大衆ではなく、法人である。業種別に見た顧客比率の表からも素材では個人顧客比率の平均が1.63と少ないのと比べて法人顧客の平均は8.37と多いことがわかる(表3−2−3)。ちなみに電機・機械では個人顧客の平均は0.70で、法人顧客の平均は9.30(とあるが、本調査の有効回答企業の電機には部品メーカーがかなり多くふくれているためであろう。さて、本題に戻り、素材は相手先が法人顧客であるため、テレビのような一般大衆向けには適していないようだ。逆に卸・小売・飲食は「かなり重視している」が22.2(表3−2−2)と重要視が高い。確かに表3−2−3で、卸・小売・飲食での個人顧客比率の平均は3.30と高い値を示しており(なお、法人顧客比率の平均は6.60)、と個人向けであることがわかる。

 

 次にインターネット。<企業規模別に判断する>と、1000人以上では「ほとんど重視していない」が3.6%、「かなり重視している」が56.4%、「非常に重視している」が7.3%(表3−2−1)とあるように、大規模な企業も非常に重視している。前述したような理由もあるだろうし、広く宣伝することに意味があるのだろう。一方、250人未満では「ほとんど重視していない」が18.5%、「あまり重視していない」が33.3(表3−2−1)であるが、インターネットはまだ最近の主流で規模が小さい企業は活用しきれていないところもあるようだ。<業種別に判断する>と、サービスでは「かなり重視している」が57.5%、「非常に重視している」が17.5(表3−2−2)とサービス業界はインターネット重要度が高い。お客様へのサービスが大事であり、サービスは現代のニーズに確実に、敏感に応えなければならない。インターネットはまさしくニーズなのであろう。

 そして新聞。ちらし・パンフレット、インターネットに引けをとらず重視されている(表3−2−1)。<企業規模別に判断する>と、1000人以上では「非常に重視している」が20.0%、「かなり重視している」が52.7%であった。250人未満では「ほとんど重視していない」が31.5%、「あまり重視していない」が25.9%であり(表3−2−1)、規模が大きいほど新聞を重要視している。やはり新聞は通勤の顔とも言えるように、非常に重要な情報媒体であり、大企業ほどその活用度を認めている。<業種別に判断する>と、建設業では「ほとんど重視していない」が3.8%と少なかった(表3−2−2)。このように建設業はほとんどの企業が重視している。このことはインターネットのことも含め、後半で業界別視点のところで述べたいと思う。

 そして雑誌。新聞よりは重視されていない(表3−2−1)。やはり新聞よりは媒体としての力は劣るのか。<企業規模別に判断する>と、あまり統一性が見られない(表3−2−1)。大規模なほど、小規模なほどという相違はあまりないようであり、平均している。<業種別に判断する>と、電機・機械、とサービスでの重要度が高い。電機・機械では「かなり重視している」が41.7%、「非常に重視している」が12.5%であった。サービスでは「かなり重視している」が40.0%、「非常に重視している」が17.5%であった(表3−2−2)。さて、出版事情を考慮すると、電機業界にとっては、特にパソコンやインターネット関係の雑誌が多数出版されていて、その雑誌に電機類の広告を載せることは効率的であろう。サービスにとっても情報誌や娯楽誌が多く、雑誌広告を重視する必要があろう。

 次はポスター。効果はそれほど望めないのか、重要度は全体的に低い。<企業規模別に判断する>と、「ほとんど重視しない」という回答は、1000人以上で25.5%、500999人で37.5%、250499人で39.7%、250人未満で55.6%あり(表3−2−1)、規模が小さくなるにつれて重要視も下がるようである。ポスターははっきりと宣伝するというよりも、行間を読んでもらうという特徴があり、効果も即効性の面では劣るのか、小規模では重要度が低い。大企業はイメージを売る、ブランドを創り上げるためにもそれなりに活用している。<業種別に判断する>と、サービスでは「非常に重視している」が10.0%で高いほうである(表3−2−2)。上記したように暗にほのめかすようなところがあって、サービス業こそ、そういった行間の部分が大切な業種であるのかもしれない。

 ちらし・パンフレット。低コストで、効果も期待できるので重要度は全体的に見ても高い(表3−2−1)。<企業規模別に判断する>と、大規模の方が小規模より、比較的高めに重要視しており、1000人以上では「非常に重視している」が23.6%、「かなり重視している」が45.5%と多かったが、250人未満では「ほとんど重視しない」が31.5%、「あまり重視しない」が11.1%であった。1000人以上では「ほとんど重視しない」が10.9%、「あまり重視しない」が7.3%であった(表3−2−1)。薄利多売のようなところもあり、資本も多くないと効果は望めない。ちらし・パンフレットを活用するならば、徹底的に活用しなければ効果がでにくいであろう。<業種別に判断する>と、「ほとんど重視しない」は、建設業が30.8%、卸・小売・飲食が13.9%であった。「非常に重視している」は建設業が15.4%、卸・小売・飲食が25.0%であった(表3−2−2)。一概には言えないが、建設業は個々が高価格であるのと比べて、卸・小売・飲食は個々が低価格であり、卸・小売・飲食がちらし・パンフレットを重視しているので、やはりちらし・パンフレットは薄利多売向きであろう。

 

 【広告媒体別のまとめ】

 どの広告媒体でも規模が大きいほど、重要度は高い。テレビを「ほとんど重視していない」は1000人以上が27.3%、250人未満が53.7%であった。インターネットを「ほとんど重視していない」は1000人以上が3.6%、250人未満が18.5%であった。新聞を「ほとんど重視していない」は1000人以上で7.3%、250人未満で31.5%であった。雑誌を「ほとんど重視していない」は1000人以上で16.4%、250人未満で35.2%であった。ポスターを「ほとんど重視していない」は1000人以上で25.5%、250人未満で55.6%であった。チラシ・パンフレットを「ほとんど重視していない」は1000人以上で10.9% 、250人未満で31.5%であった(表3−2−1)。広告をほとんど重視していないのは、小規模な企業の割合が多いということが分かる。

 

【業種別のまとめ】

建設業はインターネット、新聞を重要視していることが目立つ。建設業ではインターネットを「ほとんど重視しない」のは3.8%で、新聞を「ほとんど重視しない」のは3.8%であった(表3−2−2)。住宅は購入者が割と年輩(30代以上)で、その層に支持が高いと思われる新聞を重視していた。また住宅は一生の一度の買い物と言えるが、非常に選別をして購入するため、他社との比較は絶えない。情報収集が容易であるインターネットの重要視が高いのも納得できる。素材にとっては暗にほのめかすようなポスターなどはもってのほかで、詳しく説明できない媒体にはあまり重視していない。素材ではポスターを「ほとんど重視しない」のは43.9%、ちらし・パンフレットを「ほとんど重視しない」のは19.5%であった(表3−2−2。パンフレットのように、素材の成分や細かな説明が可能な広告媒体を重視する。電機・機械はインターネットをそれほど重視しておらず、新聞や雑誌の方を重視している。電機・機械ではインターネットを「非常に重視している」のは2.1%で、新聞を「非常に重視している」のは12.5%、雑誌を「非常に重視している」のは12.5%であった(表3−2−2)。パソコンなどIT産業商品に関しては、インターネットが可能でない環境の者への宣伝も大きな目的。そのため新聞や雑誌の広告媒体が重要視されているのであろう。卸・小売・飲食はテレビを比較的重要視していた。卸・小売・飲食でテレビを「かなり重視している」のは22.2%であった(表3−2−2)。エンドユーザーである一般消費者に宣伝することが大きな目的なので、テレビは非常に効果的。ちらし・パンフレットの重要度も高い。ちらし・パンフレットを「非常に重視している」のが25.0%であった(表3−2−2)。ほとんどの家庭が新聞を購読しているが、ちらしも同時に配達される。新聞と違いカラーで、商品のイメージも伝わりやすい。サービスでは全ての広告媒体で重要度が高い。サービスが「非常に重視している」のはテレビ7.5%、インターネット17.5%、新聞27.5%、雑誌17.5%、ポスター10.0%、ちらし・パンフレット20.0%であった(表3−2−2)。宣伝とサービスは密接した関係にあり、サービス業はイメージが命である。好イメージを持たせるために、必然的に宣伝への量も質も高くなる。

Copyright 2000, Ikuya Fukuhara

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