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3−5 ソリューション提供型商品開発(13, 14)

金枝 宏明

 

「貴社では顧客が抱えている問題を解決するような商品開発(ソリューション提供型)を行っていますか?」と質問した。その結果は、全体的に見ると、大差はないようにおもえる。どんな業界でも、商品開発の仕方はソリューソン提供型が主軸となりつつあるようだ。

 

 3−5−1 ソリューション提供型商品開発の実施

業種別に考えてみる(図3−5−1)

まずは「建設業」。建設業におけるソリューション提供型とはどのようなものが考えられるか。

建物の建設において、依頼者の意見を大いに取り入れ、ユーザの求める願望にもっとも近い形の建造物を提供する形をとるのであろう。土地や予算、デザインや工法の制約はあるにしても、業者独自のモデルハウスよりも、ユーザ自身が自分の好みにあわせて、建築を行う形がトレンドとなってきているのだろう。そして、業者はただ作るだけでなく、建築後のアフターケアまでをおこなうようになってきていると思われる。しかし、「無回答」が多く見受けられるが、これは過去からこの「依頼者の要求を反映する」と言う形があるので、今更ソリューションと言われても、はっきりしないと言う結果ではないか?

つぎに「素材業」である。圧倒的多数のソリューション提供型であるが、これは過去から存在してきた形である。つまり、素材を顧客に提供するに当たって、その素材のモチベーションを最大限に発揮できるような取り扱いを素材業者は顧客に対してアドバイスし、その加工ノウハウを提供することによって、自らの製品の良さを最大限に知って貰おうとするものである。そして、アフターケアを充実する事によって、継続的な取引を目的とするのではないのだろうか?

つぎは「電気・機械業」である。この業種は元々「パッケージ商品提供型」で発展してきた業種であると思われる。しかし、昨今のネットワーク化やベンチャー企業の隆盛などによって、社会がユーザに対して、より細やかな商品・サービス提供が可能になってきた。それは、この業界でもしかり。大衆の要求は個人ごとに細かくなってきている。そのなか、大衆に対する商品提供ではなく、大衆の個人個人に適当な商品を提供するかたちになりつつあるのだろう。そのなかで、メーカーはアフターケアを含めた商品開発を始めてきていると思われる。このパソコンなどもその一例で、メーカーも売ったら売りっぱなしではなく、ユーザの分からないことなどの質疑応答に応じたり、ソフト的に故障を起こしたりしても、サービスマンが駆けつけてくれるなどのアフターケアを始めており、さらに、そのパソコン導入にあたって、最適なOSからソフトまたはデバイス、それに環境を提供するメーカーも存在している。

つぎは「卸・小売り・飲食業」であるが、これはたとえば商品をおろすに当たって、その商品をタダ単に顧客に卸すだけでなく、その商品の適当な使い方から、商品の補償までを約束するような形が考えられており、将来の卸業の形としてはタダ単に「工場から顧客までの商品の流れを効率よくする」だけでなく、メーカーだけのちからでは行えないような、「商品の最善的な使い方やアフターケアサービス」をメーカーの代わりに行うようなかたちが生まれるのではないかと思われる。

最後に「サービス業」であるが、これは先の「卸売業」における将来の展望の予想の所に同じ所があるのではないかと思われる。また、サービスという無形物を扱うだけに、その情報の重要性というものが中心となってくるだろう。

 以上、業種ごとに分析を試みたが、全体的に云えるのは「各顧客に対応した商品を提供する」方向へと商品開発の仕方がかわってきているのではないか?と思われる。

 

3−5−2 扱っている商品のタイプ

「貴社ではつぎにあげるタイプの商品のうち貴社ではどれを扱っていますか。

あてはまるものにすべて○をつけてください。」という質問に対して、その回答の傾向を、二つのグループに分けることができよう(図3−5−2)。まず、「建設業」「素材業」「電機・機械業」のグループ、そして「卸・小売り・飲食業」「サービス業」のグループである。

このふたつのグループは同じような傾向を示している。先のグループをそれぞれ第一グループと第二グループに分けるとしょう。第一グループは主に「受注生産型」の傾向を取っていることが分かる。その反面、第二グループは「パッケージ商品提供型」をとっていることがわかる。これは、第一グループが主に、顧客からの発注により、「必要なときに必要なものを必要なものだけ発注する」という現在の在庫管理の現状を示したものであろう。それゆえ、この「受注生産型」においては、ある程度顧客が誰であるかが決まっており、その顧客に合わせた商品を必要量生産する形を取っているのだろうと思われる。

一方、第二グループはその業種柄、「商品の店頭販売」を目指したものを扱うことが多いように思われる。それゆえ、顧客が不特定多数になりやすく、顧客に合わせた商品開発というものができにくいのであろう、したがってパッケージ商品を店頭に提供する形をとっているようにおもわれる。

ここで注目すべき点は「ソリューション提供型」の割合ではないか?この割合はすべての業種に一貫して同じくらいである。そして、その割合は大きいものになっている。したがって、「ソリューション提供型」というものは業種に関係なく適応される形であるということが非常に興味深い。

「消費者個人に提供する商品」を開発する中で、メーカーは新たな道を探し始めているのではないのだろうか?

 

以上が、私の分析結果であり、その分析にはこの分析者の意志が多分にはいっていることをここで了解願いたい。

Copyright 2000, Hiroaki Kaneeda

 

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