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4 企業が学生に要求する知識・技能

4−1 新規学卒採用者の学歴別の特徴(15)

伊藤 百子

 

4−1−1 業種別の特徴

大学院卒に対しての見方

全体から見ると大学院生はスペシャリストとして見られることが多い(表4−1−1)

その傾向は、建築(34.6)、素材(48.8)に多く見られる。電気機械(37.5)にもこの傾向は見られるが、この業種に関してはプロフェッショナリスト(29.2)としてみる傾向も強く見られる。サービス業に関しては業種のくくりが大きすぎたため差異がでなかった。

また、卸.小売業においてはほとんどの企業が、採無、無回答としている。

これらの点から考えるに、素材や電機など、開発や改良を伴うような理系的要素を持つ企業では、スペシャリストやプロフェッショナリストと言ったより専門知識を習得した人材が求められる反面、卸.小売りと言った業種には専門知識を習得した人材は人件費の増加に見合う成果を上げられないと考えられており、あまり求められてはいないようである。

開発や研究を行う業種には大学院での学習が有効になるのであろう。しかし、研究開発に求められるのは化学や物理、生物学など、理系に偏っているといえよう。

 

大卒文系に対しての見方

大卒文系に関しては全体的にゼネラリストとして見られることが多く(61.5%〜70.7 にも及ぶ)、サービス業で、スペシャリストとしてみる傾向が(12.5)と、多少見られるが、ゼネラリストとして見る(62.5)に比べると大きな割合とは言えないだろう。

 

大卒理系に対しての見方

大卒理系は、やはりスペシャリストとして見られる傾向が強い。その傾向は、建築(76.9)、電機機械(75.0)、素材(63.4)といった、企画開発や製造に関わる産業に強く現れ、卸・小売・飲食等(47.2)といった、商取引に重きを置いた産業には理工系の専門知識は重視されていないのだろう。しかし、これは予測されていた結果といえる。予測外であったのは、建築、電機機械、素材の中で素材産業のみに大卒理系の学生をプロフェッショナリストとしてみる傾向が高かったことである。建築(3.8)、電機機械(2.1)、素材(14.6)この差異は単に集計値が少ないためにおきた差異であるといいきれるのだろうか。

 

短大卒に対しての見方

ほとんどの業種においてゼネラリスト(26.952.8 )として見られているようであるが、建設業(ゼネラリスが26.9スペシャリストが30.8 )ではスペシャリストとすることも多いようである。しかし、この結果は短大の分類を理系、文系とに分けずに行ったためだと思われる。

 

専門学校卒に対しての見方

専門知識、技能を学ぶための学校とあってスペシャリスト(35.0 %〜52.1 )として見られているようである。短大の分類と同様、文理の区別を明確にしなかった為、結果に要求されている知識や技能の種類が交じり合っている所もあると思えるが、専門学校ではスペシャリストとしての知識や技能を身につけられるという考えが主流を占めているといって間違いないであろう。

長引く不況のため、学生の新規採用を控える企業も多いようであり、「採用を考えていない」というの回答割合が高く、パーセンテージから見ると思っていたほどの差異は出なかったが、いくつかの例外は除き、当初の予測通りの見られ方をしており、研究開発や製造に関わる業種は、より専門知識や技術を習得している人材、特に研究開発や製造に関わる理系の知識を持っている人材を求めているのだと感じた。この傾向は、これら製造に関わる業種において、より高度な技術・知識の保持が企業の価値を大きく左右するためと言えよう。

Copyright 2000, Momoko Itoh

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