問4では「貴社では、大学の文系学部の新卒者を採用する際に、つぎの資格を持っていれば優先して採用しますか」と質問した。この節では10種類の(1)経理系の資格についての分析を行う。なお、仮に「1.この資格を取得していなければ採用しない」に3点、「2.優先して採用する」に2点、「3.取得していれば採用に有利」に1点、「4.関係ない」に0点を与えた「(仮称)採用時の優先度」という順序尺度として扱って平均値を算出するよりも、名義尺度として扱う方が単純集計やクロス集計の結果を解釈しやすいであろうと判断した。
「4.関係ない」という選択肢の度数がもっもと低かった第1位は2)税理士の45.6%であった。第2位は1)公認会計士の47.3%であり、この資格は「1.この資格を取得していなければ採用しない」という回答が1.1%でしかないが14の資格のうちではもっとも多かった。2)税理士と1)公認会計士は「2.優先して採用する」という回答がともに14.3%ともっとも多く、事務系とコンピュータ系の資格とを合わせた計32の資格のなかで2つだけ10%以上の資格であった。したがって、公認会計士と税理士は、経理系の資格のなかだけでなく、文系学部の新卒者にとってもっとも優先されている資格の双璧であると言えよう。なお、事務系とコンピュータ系の資格とを合わせた計32の資格のなかで、「4.関係ない」という回答が過半数を下回ったものは、税理士の45.6%、公認会計士の47.3%と(後述する)簿記検定の49.5%だけであった。
第3位は3)簿記検定の49.5%で、この資格は「3.取得していれば採用に有利」という回答が45.1%ともっとも多かった。同率第4位は4)簿記能力検定、5)簿記実務検定、6)中小企業診断士の54.9%であった。
第7位は7)経営管理士の65.9%、第8位は8)経理診断士の66.5%、第9位は9)経営監査士の68.1%、第10位は10)建設業経理事務士の71.4%であった。
経理系の10種類の資格の相互関係を探索するために因子分析を行った結果、固有値が1.0以上の因子が3つ析出された(表2-1-1)。第1因子への負荷が強かったのは、7)経営管理士と8)経理診断士(0.867)、9)経営監査士(0.837)、10)建設業経理事務士(0.731)、6)中小企業診断士(0.618)であり、これらはいずれも「4.関係ない」という回答が多かった資格である。第2因子への負荷が強かったのは、4)簿記能力検定(0.929)、5)簿記実務検定(0.924)、3)簿記検定(0.893)であり、第2因子は簿記系の資格と解釈できよう。第3因子への負荷が強かったのは、1)公認会計士(0.900)と2)税理士(0.895)であり、この2つの資格は「2.優先して採用する」という回答がともに14.3%ともっとも多かった資格である。
規模別に見ると(表2-1-2)、概して、経理系の資格は規模とは関連がなかった。例えば、公認会計士と税理士はともに「優先して採用する」という回答は、99人未満で13.2%、100〜199人で18.4%、200〜499人で12.2%、500人以上で16.2%であり、規模の大小とは無関係であった。
業種別に見ると(表2-1-3)、公認会計士と税理士は、卸・小売で「優先して採用する」という回答がともに3.3%と少なかったが、建設、製造、サービスでは「優先して採用する」という回答がいずれも10%台と重視されていた。
簿記系の資格は、製造→建設→サービス→卸・小売の順で重視されているという業種による相違が認められた。簿記検定を「取得していれば採用に有利」という回答は、製造(53.7%)→建設(52.2%)→サービス(39.7%)→卸・小売<(30.0%)の順で多く、簿記能力検定と簿記実務検定についても同様の傾向が認められた。
中小企業診断士、経営管理士、経理診断士と経営監査士は、卸・小売で「取得していれば採用に有利」という回答が少なく「関係ない」という回答が多かったが、のこりの3業種では顕著な相違はなかった。
建設業経理事務士は建設では「優先して採用する」が13.0%、「取得していれば採用に有利」が60.9%と他業種と比べて重視している傾向が認められた。