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【学位論文】

小木曽道夫「組織の構造と合理性〜組織の環境、公式構造、創発的構造、非公式構造、成果の間の関係」[文学修士、1985年3月31日取得、上智大学]

 本稿では、まず、組織構造の三次元モデルおよび情報−資源処理モデルという概念枠組を提唱し、公式構造、創発的構造および課業特性、非公式構造および感情的態度、組織成果という変数群に関する測定方法と変数間関係についての文献サーベイを行なった。そして、工業デザイン部門を中心とする調査データの分析によって、組織の環境、構造、および、成果との関係に関する仮説の検証を行なった。【業績一覧へ戻る】

【単行本】

小木曽道夫「組織の構造と自己組織化過程」[文学博士、1989年3月31日取得、上智大学]→『組織の自己革新〜知識集約的部門の現場から』、夢窓庵(全285頁)、1997年4月20日、ISBN4-944088-06-X C3036 定価(本体2300円(税別))

 本稿では、まず、マクロな官僚制理論およびコンティンジェンシー理論と、ミクロなヒューマン・リレーションズなどの組織研究の二大潮流のレビューを行なった。そして、組織の能動性の軽視などの既存の組織理論の限界を克服するために、組織理論に自己組織化モデルを導入して、工業デザイン部門を中心とする調査データの分析によって、組織の環境、構造、および、成果との関係に関する仮説の検証を行い、自己組織化モデルの妥当性を立証した。【業績一覧へ戻る】【本書の目次へ】

小木曽道夫『ネットワーキングとは何か?』夢窓庵(全73頁)、1998年5月10日、ISBN4-944088-07-8 C3036 定価(本体450円(税別))

 工業社会においては共有できない物質の奪いあいが経済活動の焦点となり、強制と略奪・搾取が必要となっていたためにヒエラルキー型社会システムが有効であった。一方、情報社会においては共有できる情報の分かちあいが経済活動の焦点となり、説得と融通が必要となってくるためにネットワーク型社会システムが有効になろう。ネットワーク型社会システムとは、社会システムの成員が他の成員や社会システム全体に対して意思決定における自律性を持ち、かつ、成員は当該の社会システムに自発的に参加する社会システムのことである。また、ネットワーキングとは、ある人が他の人を説得したり、ある人が他の人によって納得させられたりといった、説得と納得のつながりによる結びつきをつくっていくコミュニケーションなのである。一方、ヒエラルキー型社会システムとは、成員の意思決定における自律性が欠如している社会システムのことである。【業績一覧へ戻る】【本書の目次へ】

小木曽道夫『組織と集合行動における自己組織化と自己生産〜ブリコラージュなリゾーム』夢窓庵(全179頁)、2000年4月10日、ISBN4-944088-11-6 C3036 定価(本体950円(税別))

 ヒエラルキー型組織は人びとを暴走させてしまうことがあるのと比べて、ネットワーク型組織は知識集約的部門において有効性を向上させる。組織・集合行動の構造は、構造自己生産とも呼べる自己組織化過程を通じて、保存・崩壊・探索・変容されていく。また、組織は組織目標に志向しての統制とこれに対する応答行為から構成されるコミュニケーションを、集合行動は集合行動に動員させる価値およびその下位類型に共鳴したコミュニケーションを、ヒエラルキー型組織は強制−服従型コミュニケーションを、ネットワーク型組織は説得−納得型コミュニケーションを自己生産する。 【業績一覧へ戻る】【本書の目次へ】

小木曽道夫『ネットワーキングとは何か?[増補改訂版]』夢窓庵(全124頁)、2005年7月10日、ISBN4-944088-15-9 C3036 定価(本体762円(税別(消費税率が5%ならば800円)))

 ネットワーキングとは、ある人が他の人を説得したり、ある人が他の人によって納得させられたりといった、説得と納得とのつながりによる結びつきをつくっていくコミュニケーションである。工業社会においては共有できない物質の奪いあいが経済活動の焦点となり、強制と略奪・搾取が必要となっていたために、強制−服従型コミュニケーションを構成素とするヒエラルキー型社会システムが有効であった。一方、情報社会においては共有できる情報の分かちあいが経済活動の焦点となり、説得と融通が必要となってくるために、説得−納得型コミュニケーションを構成素とするネットワーク型社会システムが有効になろう。【業績一覧へ戻る】【本書の目次へ】

小木曽道夫『SPSSによるやさしいアンケート分析』オーム社(全163頁)、2006年5月25日、ISBN4-274-06652-5 C3041 定価(本体2400円(税別))

 ソフトウェアSPSS(Statistical Package for Social Science)についての「数学アレルギー」の方を念頭においた入門書であり、第1章 はじめに;SPSSとはどんなソフトウェアなのか?、第2章 SPSSを使うための準備、第3章 度数分布、第4章 多重回答、第5章 記述統計、第6章 クロス集計(作表のコツ、χ二乗値検定を含む)、第7章 グループの平均と一次元配置分散分析とt検定、第8章 相関分析、第9章 尺度構成と因子分析、第10章 回帰分析、第11章 判別分析のそれぞれについて、SPSSの操作方法、出力例と結果の見方、および、作表のコツというポイントから説明した。 【業績一覧へ戻る】【本書の紹介へ】

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小木曽道夫『自己生産する組織〜組織の環境、公式構造、課業特性、能率、および有効性の関係』夢窓庵(全190頁)、2007年11月20日、ISBN978-4-944088-16-4 C3036 \1143E、定価(本体1143円(税別(消費税率が5%ならば1200円)))

 組織は、組織目的に志向しての統制とこれに対する応答行為から構成されるコミュニケーションを自己生産、すなわち、自己の構成素または単位体を生産するシステムである。予測可能性の軸における継起的な情報エントロピーは、ある事象によって他の事象を予測できる程度が高ければ低くなり、理解可能性の軸における同時的な情報エントロピーは、意味するものと意味されるものとの結びつきが明確であれば低くなる。本書の理論的根拠となる第一命題は、組織のコミュニケーションにおける情報エントロピーが低ければ組織成果は高くなる、第二命題は、組織の外部環境についての情報エントロピーが低ければ有効性は高くなる、である。組織環境、公式構造、課業特性、能率、および、有効性の変数間関係についての命題は、自己生産を理論的根拠として事後解釈することができる。組織研究に自己生産理論を導入することによって、WeberやAston研究などの官僚制研究、コンティンジェンシー理論、Hawthorne研究などのリューマン・リレーションズ・アプローチ、および、職務(課業)特性モデルを統合する可能性が開けよう。 【業績一覧へ戻る】【本書の目次へ】

小木曽道夫『SPSSによるやさしいアンケート分析 第2版』オーム社(全164頁)、2012年5月25日、ISBN978-4-274-06868-3 定価(本体2400円(税別))

 ソフトウェアSPSS(IBM SPSS Statistics Version 20)についての「数学アレルギー」の方を念頭においた入門書であり、第1章 はじめに;SPSSとはどんなソフトウェアなのか?、第2章 SPSSを使うための準備、第3章 度数分布、第4章 多重回答、第5章 記述統計、第6章 クロス集計(作表のコツ、χ二乗値検定を含む)、第7章 グループの平均と一次元配置分散分析とt検定、第8章 相関分析、第9章 尺度構成と因子分析、第10章 回帰分析、第11章 判別分析、第12章 グラフ のそれぞれについて、SPSSの操作方法、出力例と結果の見方、および、作表のコツというポイントから説明した。 【業績一覧へ戻る】【本書の紹介へ】

【単行本中の論文】

小木曽道夫「統計パッケージと多変量解析」、栗田宣義編『メソッド/社会学』、川島書店(全192頁中)、第4章 45-60頁、1996年4月20日 ISBN4-7610-0575-0 C3036 P226E

 第4章「統計パッケージと多変量解析」を執筆し、第1節では、SPSS/PC+とSPSS for Windowsの概要、および、これらの統計パッケージがもつ機能と操作方法について説明する。第2節では、信頼性の検定、因子分析、回帰分析、分散分析、判別分析という多変量解析の用途、考え方の概説、SPSS/PC+のコマンドを紹介する。第3節では、抽象的概念を指標に操作化して測定したデータを、因子分析にかけて尺度の内的一貫性を検討したうえで、因果分析を行う、という多変量解析を用いた分析の典型となっている社会調査データの分析例を紹介する。【業績一覧へ戻る】

小木曽道夫「年功型人材管理の終焉〜能力主義人材管理とネットワーク型組織」、犬塚先編『新しい産業社会学』、有斐閣(全294頁中)、第3章 53-74頁、1997年4月20日 ISBN4-641-12030-7 C1336

 第3章を執筆した。企業の発展とピラミッド型の年齢構成を前提とする年功型人材管理は高度経済成長期までの日本企業の発展を支えた原動力のひとつであり、バブル景気の崩壊までは多少の修正を加えることによって多くの日本企業で採用されてきた。現在は人材管理の激変期であるが、今後の低成長経済下における人材管理は、人事考課での能力主義評価の導入、従業員によるキャリア・コースの選択余地の増加、組織のフラット化に伴う昇進の意味の変化といった変化が起きている。また、ネットワーク組織という視点からJITおよびNPSについての考察を行う。【業績一覧へ戻る】

小木曽道夫「年功型人的資源管理の終焉〜能力・成果主義人的資源管理の模索」、犬塚先編『新しい産業社会学[改訂版]』、有斐閣(全310頁中)、第3章 55-76頁、2003年12月10日 ISBN4-641-12198-2 C1336

 第二次大戦敗戦前に形成され普及した年功型人的資源管理は、高度経済成長期までの日本企業の発展を支えてきた。企業の成長とピラミッド型の年齢構成を前提として、内部労働市場において新卒者を定期採用して企業内教育訓練によりゼネラリストとして能力開発してきた年功型人的資源管理は、「バブル景気」崩壊後において終焉を迎えるに至った。今後の経済停滞と情報社会における人的資源管理は、専門的な能力を持つ必要な人材を必要に時に必要な人数だけ雇用する方向のもとで、能力=期待主義と成果=結果主義の適切な適用により処遇していくことになろう。【業績一覧へ戻る】

【雑誌論文】

小木曽道夫「組織の情報処理アプーローチの2つの流れ」『上智大学社会学論集』通巻第10号 1-15頁 1986年3月31日

 組織における情報処理に着目した分析枠組には、組織自体を分析単位として、組織の環境と構造との交互作用効果によって成果を説明するコンティンジェンシー理論の理論的根拠となるGalbraith の情報処理モデルと、社会的情報要因によって職務特性を説明するSalancikとPfeffer が提唱した情報処理アプーローチがある。本稿は、両者の分析枠組の共通点と相違点について整理した。【業績一覧へ戻る】

小木曽道夫「組織の非公式構造の計量的研究」『社会学年報』通巻第15号 111-130頁、1986年9月1日

 本稿は、産業・企業の研究領域における計量的研究であり、製造業企業の工業デザイン部門を対象としたパネル・データにもとづいて、組織の非公式構造と生産性との関係について、交差的時間差相関分析などの縦断的分析を含む分析を行ったところ、会社への支持が生産性向上の原因となるなどの結果が明らかになった。そして、補論として計量的研究に関する考察を行った。(『組織の自己革新』の一部)【業績一覧へ戻る】

小木曽道夫「ライフスタイル分析の問題点」『上智大学社会学論集』通巻第11号、51-73頁、1987年3月31日

 市場の成熟化に伴って、購買動機の主観的要因への着目が再びライフスタイル分析への関心が高まっている。本稿では、まず、Weber のLebensfuhrung の概念を検討し、1970年代のライフスタイル分析の主流となったWells などが開発したAIOアプローチの分析方法、および、潜在的次元、マーケット・セグメンテーション、商品の使用状況別のプロフィールなどの分析結果についてのレビューを行い、AIOアプローチの問題点を検討した。【業績一覧へ戻る】

小木曽道夫「組織の構造の三次元と自己組織化過程」『組織科学』第21巻第3号、63-74頁、1987年12月20日

 本稿は、公式構造、創発的構造、非公式構造、という三つの次元から記述する組織構造の三次元モデルに準拠して組織構造を測定した。そして、組織の構造と成果についての変数間関係の理論的根拠を、組織の自己組織化過程という視点から説明することを試みる。工業デザイン部門を中心とする調査データの分析によって、組織構造の三次元は独立であり、また、これらの次元のなかでは、非公式構造が生産性を向上させる、という結果が得られた。(『組織の自己革新』の一部)【業績一覧へ戻る】

小木曽道夫「組織における自己組織化過程と合理性」『上智大学社会学論集』通巻第12号、61-78頁 1988年3月31日

 本稿は、まず、情報理論と構造言語学の視点から、社会的行為の合理性を、隣接関係における行為連関の条件つきエントロピーの少なさとしての予測可能性と、相似関係における行為連関の条件つきエントロピーの少なさとしての理解可能性という、二つの独立した次元として再定義した。そして、組織における自己組織化過程と合理性との関連についての概念的検討を行ない、散逸的自己組織化過程においては一時的に合理性が低下することを示唆した。(『組織の自己革新』の一部)【業績一覧へ戻る】

小木曽道夫「組織の構造の三次元と環境との関係」『上智大学社会学論集』通巻第13号、70-85頁 1989年3月31日

 本稿は、公式構造、創発的構造、非公式構造、という三つの次元から記述する組織構造の三次元モデルに準拠して組織構造を測定した。そして、組織の環境と構造についての変数間関係の理論的根拠を、組織の自己組織化過程という視点から説明することを試みる。工業デザイン部門を中心とする調査データの分析によって、組織環境は公式組織とは相関を示しやすいが、創発的構造および非公式構造とは概して無相関であることを明らかにした。(『組織の自己革新』の一部)【業績一覧へ戻る】

小木曽道夫「自己組織化とポスト・モダン〜情報プロデュースの役割」『武蔵野女子大学紀要』第25号(通巻30号) 17-24頁 1990年2月25日

 脱工業/近代化という社会変動を分析するために、情報活動を隣接関係と相似関係という視点から情報プロセシングと情報プロデュースと概念化した。そして、これらの概念と自己組織化過程との関連について整理し、自己組織化という視点からの近代化および脱近代化という社会変動についての検討を行い、近代社会では情報プロセシングが重視されてきたが、脱近代化に伴って情報プロデュースが重視されるようになることを示唆した。【業績一覧へ戻る】

小木曽道夫「慣習と流行〜概念的再検討」『上智大学社会学論集』通巻第14号 146-158頁 1990年3月31日

 本稿では、社会システムの均衡理論の限界について検討し、つぎに行為自体を構成要素とする社会と、行為を規定する規則であり転移可能である文化の概念について検討を行った。そして、一見、対照的にみえるような慣習と流行という概念について、両者はともに文化システムの自己組織化過程であるという視点から再概念化を試み、慣習と流行はともに、これらに準拠した行為が自省的ではなく慣習的であることを示唆した。【業績一覧へ戻る】

小木曽道夫「自己組織化としての集合行動」『武蔵野女子大学紀要』第26号(通巻31号)、13-21頁 1991年2月25日

 集合行動は社会変動の口火を灯すこともある制度化されていない自然発生的な人々の行動であり、ネットワークとも関連が深い行動である。本稿では、まず、非均衡過程を考慮した構造−機能主義の典型であるSmelser の集合行動の分析枠組についてのレビューを行い、そして、自己組織化という視点から集合行動についての再検討を行なった。実在した集合行動ではないが、映画'Do the Right Thing'の検討を通じて、構造的緊張がゆらぎの発生と、一般化された信念が秩序の再構成と関連が深いことを示唆した。【業績一覧へ戻る】

小木曽道夫「組織における価値と文化」『産能短期大学紀要』通巻第24号 19-28頁 1991年2月25日

 本稿は、自己組織化という視点から組織における価値と文化についての概念的検討を行う。社会と文化との相違から類推すると、組織構造は組織成員の行為自体のパターンであり、組織文化は組織成員の行為を規制する価値のパターンであると区別できよう。自己組織化という視点からは、組織文化は組織の目標や構造を保存したり変容させたりする、組織の秩序プログラムという役割を担っていると考えられる。【業績一覧へ戻る】

小木曽道夫「脱近代化と循環変動〜服飾モードの三角形循環仮説」『武蔵野女子大学紀要』通巻第27号 27-34頁 1992年2月25日

 本稿では循環変動の一例として、服飾モードと価値志向との時系列的相関関係をとりあげた。1970年代前半では装飾主義的な順三角形ラインと脱近代的な価値志向がピークを達し、1980年代前半では機能主義的な逆三角形ラインと近代的な価値志向が復活し、1990年代にかけて順三角形ラインと脱近代的な価値志向が再び復活してきた傾向を分析した。【業績一覧へ戻る】

小木曽道夫「在米日系企業と在日アメリカ系企業における組織文化の比較分析」『上智大学社会学論集』通巻第16号 53-71頁 1992年3月31日

 日本企業の組織文化に関わる文化摩擦が問題化している。在米日系企業と在日アメリカ系企業を対象とした調査データの分析の結果、まず、事前に考えた組織文化尺度の内的一貫性は充分には確保されていなかった。つぎに、現場主義と能力平等主義は日本でもアメリカでも普遍的に通用する価値であるが、集団主義と階層平等主義は日本だけで通用する個別的な価値であることが明らかになった。【業績一覧へ戻る】

小木曽道夫「日本型人事・労務管理の自己組織化」『労働研究所報』東京都立労働研究所、通巻第14号、31-40頁 1993年3月

 企業の人事・労務管理の変革はシステム自体の変革であると考えられ、本稿では自己組織化という視点から日本型人事・労務管理の分析を試みた。ゼネラリスト→管理職志向のキャリア形成やイヌ型の人事・労務管理という従来からの日本型人事・労務管理は、企業内年齢構成の変化、国際化、情報化、従業員の価値志向の変化といった要因によって、専門職志向のキャリア形成や自律と統合とが統合されたネコ型の人事・労務管理に変化していくだろう。【業績一覧へ戻る】

小木曽道夫「情報プロデュースと脱近代化」『武蔵野女子大学紀要』第28号(通巻33号)、130-147頁 1993年3月30日

 近代社会はヨーロッパ文化が支配的であった社会であったが、脱近代社会においてはアジア・アフリカ文化が復権するであろう。ヨーロッパ文化は情報プロセシングを重視して無からの創造を理想とするが、アジア・アフリカ文化は情報プロデュースを重視して、引用と編集による創造を行う。アジア文化における創造性の例として商品開発における応用研究を、アフリカ文化における創造性の例としてヨーロッパ文化とアフリカ文化との異文化接触の産物であるポピュラー音楽のなかからヒップポップ、ハウス、レゲエを取りあげた。脱近代社会の課題とは、情報プロデュースを重視して複写可能な情報を共有しあい、人間と自然、人間どうしが調和していくことではないだろうか。【業績一覧へ戻る】

小木曽道夫「工業と芸術との融合による付加価値の創造と労働疎外の克服〜工業デザインの事例」『武蔵野女子大学紀要』第29号(通巻34号)、141-155頁, 1994年3月15日

 近代工業社会における労働者の生産手段からの疎外は労働疎外を引き起こした。Morris以降の工業デザインの変遷は大量生産と装飾芸術との統合をめざすものであった。情報社会における付加価値は商品に内在するものではなく、ユーザー志向の機能主義に示されるように商品とユーザーおよび労働者との関係に所在する。知識集約的労働における生産手段の情報化に伴う生産手段の所有可能性の増加は、労働疎外を克服するとともに、労働における人間の喜びの表現という形で工業と芸術との統合を可能にするであろう。【業績一覧へ戻る】

小木曽道夫「将来に禍根を残す採用抑制」『労働研究所報』東京都立労働研究所、通巻第16号 70-75頁 1995年3月

 本稿は、東京都立労働研究所公開講座での講演「将来に禍根を残す採用抑制」に基づくものであり、「大卒女性の職業選択行動と職業生活」調査の結果にもとづいて、好況期では、女子学生は周囲につられて総合職を求職し、企業側は基幹労働力として適切でない女性を採用していたが、昨今の不況期では基幹労働力としての能力と意欲がある女性を採用抑制している可能性を指摘し、求職・採用行動には非合理的な集合行動としての側面があることを示唆した。【業績一覧へ戻る】

小木曽道夫「ネットワーク概念の再検討」『國學院経済学』第45巻第1号、1-20頁 1997年3月15日

 本稿では、はじめに、Lipnack and Stamps、今井・金子(1988)、および、公文(1994)というネットワークの概念化を試みた先行研究を紹介した。そして、一般ネットワークの定義とその表記方法を提唱した。つぎに、ネットワーク型社会システムを定義し、その特徴を指摘した。そして、組織と集合体のそれぞれについての、ネットワーク型システムとヒエラルキー型システムについての考察を行った。【業績一覧へ戻る】

小木曽道夫「情報エントロピーの濃縮過程〜原子力村の事例」『國學院大學 経済学研究』第43輯、1-31頁 2012年3月10日

 情報エントロピーの濃縮とは、嘘を嘘で塗り固めるように、情報エントロピーの増加のうち、ある不正確な意味作用を担う情報エントロピーが高いコミュニケーションに、その不正確な意味作用を肯定する情報エントロピーが高いコミュニケーションを継起的に連鎖させてさらに情報エントロピーを増加させることである。原子力村とは、原子力の使用およびその推進を目的とする組織の複合体からなる運命共同体である。原子力村は「原子力は安全である」という原子力の安全神話の嘘をつき通すために、原子力事故についての情報を改ざん・ねつ造するという情報エントロピーの凝縮を、「発電コストは原子力発電の方が火力や水力など他の発電方法と比べて経済的である」という原子力発電の経済性神話の嘘をつき通すために、発電原価(円/kWh)は、原子力が5.9ともっとも経済的である、という嘘で塗り固める情報エントロピーの濃縮を行った。【業績一覧へ戻る】

小木曽道夫「コミュニケーション理論と自己生産」『國學院大學 経済学研究』第45輯、1-18頁 2014年3月10日

 本稿では、ShannonとSaussureのコミュニケーション理論と対比することを通じて、コミュニケーションの性質を明らかにする。コミュニケーションの共時的な意味作用とは、モールス信号と言語との符号化のような、意味するものと意味されるものとの結びつきである。コミュニケーションの継起的な確率過程においては、冗長性というムダの付加により、エントロピーを減少させることができる。コミュニケーションは、自己の継起する以前の状態に準拠する点においては自己準拠システムであるが、他の種類の自己生産システムに準拠する点においては他者準拠システムである。【業績一覧へ戻る】

小木曽道夫「意味作用と条件つき相互規定」『國學院大學 経済学研究』第46輯、1-30頁 2015年3月10日

 意味作用とは、異種のシステム間の構成素間で意味するものと意味されるものとを同定化し、かつ、意味するものと意味されるものそれぞれのシステム内の構成素を区別できるように差異化することである。特定の条件を満たした場合に限定してある種類の自己生産システムが他の種類の自己生産システムを規定しあう事態である条件つき相互規定の条件とは、異種の自己生産システム間の構成素間の意味作用が成立していることである。【業績一覧へ戻る】

小木曽道夫「ブラック企業の構造自己生産」『國學院大學 経済学研究』第47輯、1-41頁 2016年3月10日

 ブラック企業とは、職務に限定されない非限定的な労働を強制し、かつ、定着が悪い企業のことである。工業化初期の日本では、年功序列、終身雇用、運命共同体主義が構造変容自己生産された。そしてこれらの複合は、経営の予測可能性が高くなるため経営者により、家族の将来の予測可能性が高くなるため従業員により受容され、1980年代にかけて構造変容自己生産され続けた。1990年代以降の経済成熟期にはいった日本企業は、会社の利益を確保するために人件費を削減する必要に迫られ、年功給と終身雇用の廃止を目指して、成果主義や自己都合退職偽装という操縦を試みたが、従業員に受容されず構造探索自己生産となることが多かった。ブラック企業と呼ばれている企業は、新興企業が多いため、もともと年功序列と終身雇用を導入しておらず、運命共同体主義的な経営理念を洗脳することを通じて非限定的な労働を操縦した。一方、ブラック企業の従業員は、非限定的な労働に洗脳されて服従するか、または、不本意ながらも服従させられて、ブラック企業が構造変容自己生産されてしまった。日本企業は、内部労働市場を前提とする限り職務に限定されない非限定的な労働を従業員に課す必要があるので、利益確保のために雇用を切り捨て、かつ、運命共同体主義イデオロギーを用いた操縦などにより非限定的な労働を従業員に強制するならば、ブラック企業になりがちである。【業績一覧へ戻る】

小木曽道夫「育児と介護を阻害する自明性の研究」『國學院経済學』第70巻第1号、17-37頁 2021年11月30日

 意味作用における意味するものと意味されるものとの同定が新しいことを新奇性,以前からあることを自明性と分類する。自明な意味作用は,意味するものと意味されるものとの同定について意識せずに済むために「あたりまえ」なのであるが、何が自明な意味作用の同定であるのかは集団や文化によって異なるため,発信者と受信者との間で、意味するものと意味されるものとの同定に相違が生じて不明確になることがある。発信者が新しい意味で伝えようとしたのに,受信者は自明性に囚われた意味で解釈して,発信者と受信者との間で意味するものと意味されるものとの同定に相違が生じて,発信者の意志を送信する書式がなく変換が作動しなかったためコミュニケーションが作動しないことがある。また、コミュニケーションは作動しても機能しなかったりすることがある。「任意後見制度は存在しない」という自明性が介護を,「男性はおしめ交換や幼児のトイレ介助を分担しない」,「住所は1カ所である」という自明性が育児を阻害する現状について,参与観察調査によってデータを収集して分析した。これらの自明性が構造保存自己生産された理由は,国の法律や社会的価値といった上位の規範ではなく職場などのウチの規範を優先するというウチの論理,および,自省的行為が欠如した慣習的行為に流されたためである。【業績一覧へ戻る】

小木曽道夫「組織における相互準拠」『國學院経済學』第71巻第1号、23-38頁 2022年9月30日

 自己組織または自己生産について論ずる際には、自己準拠もしくは自己言及が鍵概念とされてきた。生命システムがDNAという自己準拠できる秩序プログラムを保有しているのと比べて、社会システム、経済システム、および、経営システムという社会現象のシステムは、自己準拠できる秩序プログラムを保有していない。社会システム、経済システム、および、経営システムという社会現象のシステムは、これらの異なる種類のシステムが併存する多重システム間で、システムが作動するうえで相互に他者の基準に準拠する、すなわち相互準拠することによって秩序づけられると考えられる。【業績一覧へ戻る】

【研究ノート】

小木曽道夫「コンティンジェンシー理論の再検討〜自己組織化モデルとの関連」『組織科学』第24巻第1号 71-81頁 1990年7月20日

 1970年代を中心にコンティンジェンシー理論にもとづく調査研究が数多く行われたが、これらの研究では一貫した結果が得られていない。本稿では、環境の異質性と変動性という次元ごとに仮説を再定式化して、工業デザイン部門を対象とした調査データの分析を行った。その結果、組織の環境と公式構造との交互作用効果によって成果をある程度説明することができたが、その説明力は非公式構造のものよりは弱かった。(『組織の自己革新』の一部)【業績一覧へ戻る】

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