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 伝承文学専攻  

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伝承文学を考える 

高野山への「骨のぼせ」

 

今回は小川直之先生です

                                         

 平成12年の8月と12月に、合わせて9日間、学生たちと奈良県吉野郡野迫川村に民俗調査に行

きました。野迫川村の北股集落を中心として、地元の方々から多くのことを教えて頂きました。

 学生たちとともに興味をもったことはいくつもありますが、中でも高野山へのコツノボセ(骨のぼ

せ)は興味深い習俗でした。ここは現在も土葬を行っている地域で、納棺の前に亡くなった方の髪

の毛と爪を少し切り取り、これを小さな骨壺に入れておき、埋葬の翌日に「骨のぼせ」といって、家

の縁側に骨壺を置いて茶湯供養を行った後、家族や親戚の者たちで高野山奥の院へ納めていま

す。骨壺を使うようになる以前は、竹筒を2本束ねてこの中に髪の毛と爪を入れ、小さな握り飯を

作って奥の院に向かいました。途中、清水が湧いている谷へ握り飯を半紙で包んで供えながら奥

の院に向かい、六角堂(納骨堂)に納めてきたといいます。北股集落は、すべての家が高野山・高

室院の檀家になっていて、現在では車で高室院へ骨壺を持って行き、奥の院に納めることを依頼

する場合が多くなっているようです。こうして「骨のぼせ」をして、あらかじめ依頼しておいた塗り位

牌に寺で魂を入れてもらって帰宅してから、イワイ(位牌)供養を行い、白木の仮位牌を墓に納めて

「骨のぼせ」は終わります。
 

 12月に野迫川村へ行った帰りには奥の院にお詣りし、そこで1時間ほど過ごしましたが、この間

には家族連れ3、4組の方々が「骨のぼせ」に奥の院を訪れ、現在の「骨のぼせ」の光景を垣間見

ることができました。
 

  この習俗は遺体の一部を、その人の「いのち(魂)」を象徴するものとして霊地に納める習俗で、

一般的には骨の一部を納めることから、民俗学では「納骨習俗」と総称しています。納骨習俗は高

野山奥の院のほか、大阪・一心寺など、各地で見ることができ、なかには特定の山上に納めると

ころもあります。
 

  伝承文学専攻では、文献を使ってさまざまな伝承を学ぶことだけではなく、このように全国各地

へ出かけていって、伝承の実際を自分自身で直接見聞きすることを重視しています。