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2−4 ISO14000番台の取得目的と取得後の結果(問4、問5)

馬場 宏之

 

あたりまえのことではあるが品質の良し悪しに対して消費者の関心は強い、最近になりようやく環境問題の意識が強まってきた。そのため現在の段階ではISO14000番台よりISO9000番台の取得率のほうが高いが、ISO14000を取得しようと申請または準備している企業が31.4%と高い。消費者も地球にやさしい商品を進んで購入しようと敏感になってきているため、売上に影響を及ぼす。また国際的に活動を行なう企業は環境問題の国際基準であるISO14000を取得したほうが有利であるだけでなく、ISO14000を未取得だと企業活動を行なえない国があるため企業側も環境問題への取り組みが強まってきている。

 

 2−4−1 ISO14000番台の取得目的

そこでISO14000を取得済み、申請・準備中の企業を対象としてその取得目的を見てみると【単純集計】、回答が多かった順に、第1位 企業イメージの向上(89.8%)、第2位 環境へ配慮した企業活動への転換(86.7%)、第3位 自治体、地域社会との良好な関係作り(46.9%)、第4位 従業員の士気向上(36.7%)、第5位 コスト削減(32.7%)、第6位 国内市場の開拓(30.6%)、第7位 国際市場の開拓(23.5%)、第8位 生産性の向上(13.3%)であった。

以上の結果で分かるように「従業員の士気向上」、「コスト削減」、「生産性の向上」といった利益に関わる項目は低く、「企業イメージの向上「」環境へ配慮した企業活動への転換「「自治体、地域社会との良好な関係作りなど、企業のイメージに関わる項目が極端に高いことから、直接利益を上げるということよりも企業の宣伝効果を狙った点に取得の目的が大部分を占めているように思われる。国内・外の市場の開拓に関しては不況であるため市場を広げようとする企業は少ない。よってこの項目を目的として14000番台を取得する企業は少ないのではないかと思う。

つぎに規模別に見ると(表2−4−1)1企業イメージの向上」はだいたい同じくらいの値を示していて企業規模と関連がなかった。「2従業員の士気向上」250人未満が50.0%と比較的大きな値を示しているが強い関連はなかった。「3環境へ配慮した企業活動」は強い関連はなかった。「4コスト削減」は500999人、1000人以上がそれぞれ42.1%、35.0%と多少大きな値をしめしているが強い関連はなかった。5生産性の向上」は500999人、1000人以上がそれぞれ21.1%、17.5%と多少大きな値を示しているが強い関連はなかった。「6国際市場の開拓」は強い関連はなかった。「7国内市場の開拓」は規模が大きくなればこれを目的とした企業の割合がやや多くなる傾向が見られたが、大きな差ではなかった。「8自治体、地域社会との良好な関係づくり」も規模が大きくなればこれを目的とした企業の割合がやや多くなる傾向が見られたが、大きな差ではなかった。

 

2−4−2 ISO14000番台の取得後の結果

【単純集計】を見るとその他を抜かした8項目ほとんどが「かなり良くなった」か「変化なし」という回答が多く、また、目的としていた比率が高かった項目は結果のほうでも「変化なし」より「かなり良くなった」の比率が高い。目的としていた比率が低い項目のうち「コスト削減」と「従業員の士気向上」は目的と反して「かなり良くなった」を示す企業多い。

 ISO140000は企業の思惑通り企業イメージの向上に大いに健闘したことになる。また環境問題というと費用のかかりそうなものだが「コスト削減」項目で「かなりよくなった」を示した企業が40%もあった点は予想とは逆の結果を示した。

 

ISO14000番台を取得して以下の項目で悪くなったものはなかった。そこで企業規模と「よくなった」との関連を見てみる(表2−4−3)

1)イメージ向上(大変よくなった+かなりよくなった)は企業規模が大きければ多くなる傾向があり、「変化なし」は企業規模が小さい方が多かった。

2)従業員の士気向上(大変よくなった+かなりよくなった)と企業規模は関連がなかった。「大変よくなった」と「かなりよくなった」と「変化なし」は企業規模が大きければ多くなる傾向があった。

3)環境へ配慮した企業活動への転換は規模と関連がなかった。

4)コスト削減が「かなりよくなった」および「変化なし」は企業規模が大きくなれば少なくなる傾向があった。

5)生産性の向上が「よくなった」企業は規模が大きいほうが多かった。

6)国際市場の開拓は規模とは関連がなかった。

7)国内市場の開拓も規模とは関連がなかった。

8)自治体、地域社会との良好な関係作りが「大変よくなった」および「かなりよくなった」企業は規模が大きければ多かったが、しかし250499人で「大変よくなった」示す値が25.0%もいるが500999人と1000人以上で「大変よくなった」を示す値はともに0.0%であった。

 14000番台を取得する目的と取得した結果とのクロス集計の結果(表2−4−4)当該の項目を取得目的としていた企業であれば取得目的としていなかった企業と比べて「大変良くなった」と「かなり良くなった」とを合計した回答が、従業員の士気向上(100.0%)、環境へ配慮した企業活動への転換(96.4%)、国際市場の開拓(45.8%)、国内市場の開拓(55.6%)と多い傾向が見られた。

 

Copyright 2000, Hiroyuki Baba

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