【日時】 2013年9月6日(金)14:40~17:40
【場所】 國學院大學渋谷キャンパス 学術メディアセンター1F 常磐松ホール
[主催] 日本宗教学会
[共催] 國學院大學研究開発推進機構日本文化研究所
【講演者・タイトル】(発題順)
Michael Witzel氏(ハーバード大学教授)
”Out of Africa: Tracing Early Mythologies by a New Approach, Historical Comparative Mythology”
長谷川眞理子氏(総合研究大学院大学教授)
「進化生物学から見た宗教的観念の心的基盤」
芦名定道氏(京都大学教授)
「現代の思想状況における宗教研究の課題──キリスト教研究の視点から」
【司会】
井上順孝(國學院大學教授)
【趣旨】
19世紀以来のヨーロッパの宗教研究は多様な源をもっています。宗教学の学説史に必ずといっていいほど登場するのは、比較言語学者・神話学者のF.M.ミュラー、宗教社会学者のM.ウェーバーやE.デュルケーム、人類学者のE.B.タイラーやJ.G.フレーザー、宗教心理学者のW.ジェイムズなどです。こうしたヨーロッパの研究に強い影響を受けて展開した日本の宗教研究もまた、当初から多様な視点から行われてきました。今日に至るまで、社会学、人類学、民族学、民俗学、心理学、歴史学、哲学、文学など、隣接する学問分野とたえず接触交流しながら、宗教史、宗教現象などについてのさまざまな研究が展開してきました。
しかし、最近の20年間ほどは、ヨーロッパを中心に、それまでとは少し異なる領域からの宗教への関心が強まってきています。2006年には国際認知宗教学会(International Association for the Cognitive Science of Religion)が設立されました。宗教行為や儀礼、宗教史の展開に大胆な仮説が出されています。宗教研究に認知科学の視点を取り入れる試みが急速に広がっています。
1990年代からは脳科学(ニューロサイエンス)の急速な展開が宗教研究にも及んできました。また進化生物学、コンピュータサイエンス、認知哲学といった、従来は宗教研究とはあまり縁がないと考えられていた領域でも、宗教の根本的な問題について新しい議論が交わされるようになってきました。たとえば、なぜ人間は宗教を必要としたのか、神や霊といった観念はどうやって生じたのか、宗教的回心とは一体どういうメカニズムなのか、といった問いです。これらは19世紀以来議論されている古典的な問いと言えますが、それに新しい光を当ててみようという機運が生じています。
今回はこうした最近の新しい研究趨勢の中で、日本における宗教研究はどのような展望を得るべきかを考えるための講演会を企画しました。比較神話学、進化生物学、キリスト教神学の3人の研究者に講演をお願いしました。一見遠い分野に見える学問領域が、宗教現象を対象としたとき、どのような視点をつなぐことができるか、新しい研究のネットワークの可能性はあるのか、そうしたことを考える契機としたいと思っています。ぜひご来聴いただきたいと思います。