國學院大學日本文化研究所編、発行:弘文堂、1984年

概要

 昭和58年1月に、日本文化研究所主催で開催された国際シンポジウム「アジアの近代化と民族文化の発見」の講演、討議ペーパー、討議内容の紹介等によって構成されている。ロバート・ベラーの「文化的アイデンティティとアジアの近代化」、ピーター・バーガーの「西と東―世俗化をめぐる諸問題」という論文が並んでいる。また、インドネシア、フィリピン、シンガポール、インド、タイなどアジア各国の事例についての、それぞれの国の研究者による興味深い報告が並んでいる。国学という概念が通文化的に適用可能かどうか、野心的な試みがなされた書である。アジアの文化を考える人にとっては、必見の書である。英語版も同時刊行。

目次

序言(吉川泰雄)
まえがき
提言 アジアの近代化と民族文化の発見

 序章 基調講演
  文化的アイデンティティとアジアの近代化(ロバート・N・ベラー)
  西と東―世俗化をめぐる諸問題(ピーター・L・バーガー)

 第一章 宗教と世俗化
  世俗化論をめぐって(井門富士夫)
  インドネシアのイスラム的近代化(アリフィン・ベイ)
  フィリピン人の自画像とカトリシズム(ルネ・E・メンドーサ)
  日本社会の宗教性と俗化(薗田稔)

 第二章 伝統文化と近代化
  シンガポールの国家建設と言語政策(郭振羽)
  韓国近代化と伝統の再認識(伊藤亜人)
  日本近代化と伝統文化―日本における二、三の問題(平井直房)

 第三章 民俗文化の発見
  インドと日本―文化的アイデンティティの比較(トリロキ・N・マダン)
  タイ文化の継承と人文学(ピニット・ラタナクン)
  民族的自立と韓国学の形成(柳東植)
  近世国学と新国学(内野吾郎)

 第四章 主題の展開
  それぞれの「近代化」と「世俗化」―アジアからの発想(井上順孝)
  二つのアイデンティティ―国民意識への指向(宇野正人)
  近代化と民族文化の発見―「アジアの苦悩」を視点に(阪本是丸)

 終章 比較国学への展望
  比較国学への展望―シンポジウムを振りかえって(薗田稔)