國學院大學日本文化研究所『国際研究フォーラム「ミュージアムでみせる宗教文化」報告書』令和6(2024)年2月
本報告書は、2022年12月に國學院大學研究開発推進機構日本文化研究所の主催で開催された国際研究フォーラム「ミュージアムでみせる宗教文化」における議論をまとめたものである。
日本文化研究所は、長年にわたって、国際的な比較の視点を組み込みながら、日本の宗教文化について研究を進めてきたが、近年は、とりわけ視覚文化との関わりにおいて宗教文化を検討することを試みている。例えば、2020年度には「見えざるものたちと日本人」という国際研究フォーラムを開催し、宗教文化においてしばしば「見えない」ことに特別な意味付けがされる一方で、それが視覚文化においてどのように描かれているのか、あるいは描かれないのか、といったことについて議論した。
また、2021年度には「日本の宗教文化を撮る」という国際研究フォーラムを開催し、宗教の実践においては実体的なモノがあり、またそれに関わる形で行為などのコトがあることになるが、そうしたモノやコトをどのように撮影し、記録し、見えるようにするのか、といったことについて論じた。
これらは、宗教文化に関して文字資料が重要であることを前提とした上で、あらためてモノ資料や、視覚表象とその解釈などを検討しようとするものであったが、「ミュージアムでみせる宗教文化」もまたその延長線上にある。企画に際しては、どのように宗教文化を「みせる」―「見せる」であり「魅せる」でもある―のかということを基本的な問題意識とし、かつそれを、宗教文化教育という局面にも目を配りながら、「ミュージアム」という場に焦点を合わせることとした。
具体的には、全体を二部に分けて構成し、第Ⅰ部「大学ミュージアムの中の宗教文化」では、宗教系大学に設置されている大学ミュージアムの展示担当者に登壇してもらい、宗教系大学という、ある意味で特定の宗教伝統と当事者的に関わっている立場から、どのような展示の試みがなされているのかを報告してもらった。
また第Ⅱ部「多様性の中の日本の宗教文化」では、アメリカにおける日系人の宗教文化や、アイヌの宗教文化についての展示について報告してもらい、それらの豊かさについて学びながら、同時に日本で「日本の宗教文化」をみせようとする際の自明性のようなものを、少し異なる視点から照射することを企図した。
本報告書が、ミュージアムにおける宗教文化、あるいは宗教文化をどのように「みせる」のかについて考えるきっかけとなれば幸いである。(平藤喜久子「はしがき」)
報告書のPDFは以下のリンク先からダウンロードすることができる。
『国際研究フォーラム「ミュージアムでみせる宗教文化」報告書』(PDF: 22.4M)
冊子版をご希望の方は研究開発推進機構事務課までお問い合わせ下さい。
【目 次】
はしがき
開催概要
国際研究フォーラム「ミュージアムでみせる宗教文化」
第Ⅰ部 大学ミュージアムの中の宗教文化
「来て、見て、体感する神道と日本の宗教文化―國學院大學博物館の取り組みを通して―」(深澤太郎)
「展示するモノと展示するコト―仏教文化の視点から―」(熊谷貴史)
「キリスト教展示の現状と課題―諸教会の文化をいかに展示するか?―」(下園知弥)
第Ⅱ部 多様性の中の日本の宗教文化
「強制収容所内の信仰と宗教―アメリカの日系人博物館を通して考える日系人の多様な宗教経験―」(エミリ・アンダーソン Emily Anderson)
「アイヌ文化展示が照らす日本・東アジアの宗教」(北原モコットゥナㇱ)