國學院大學日本文化研究所『国際研究フォーラム「見えざるものたちと日本人」報告書』令和4(2022)年2月
「本報告書は、2020 年12 月に國學院大學研究開発推進機構日本文化研究所の主催で開催された国際研究フォーラム「見えざるものたちと日本人」の基調講演、ワークショップ「見えざるものをエガク」、「見えざるものをカタル」における議論をまとめたものである。
2019 年の年末頃から影を落とし始めた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、2020年にはわれわれの生活を大きく翻弄することとなった。新しい「見えざるもの」の登場だ。この見えざるものに対抗するため、われわれはお札のようにマスクをし、呪術のように手を洗い、自粛という名の忌み籠もりをする。時代が違っていたら、コロナウイルスも妖怪や鬼といった見えざるものたちと変わらないもののように受け止められていたのではないだろうか。
ウイルスに限らず、人類はさまざまな見えざるものと関わってきた。日本では、その見えざるものたちを神と呼んだり、幽霊、妖怪、鬼などさまざまな形で表現し、その交流の物語を作り出し、描き出してきた。現代の医者のように、陰陽師が活躍したり、僧侶が調伏したりすることもあれば、小泉八雲のように解釈し海外に伝えた人物もいた。
本フォーラム「見えざるものたちと日本人」では、まずワークショップを2回開催し、「見えざるものをエガク」として美術史の観点から、「見えざるものをカタル」として主に民俗学の立場から論じていただいた。その上で、基調講演では、湯殿山信仰、つまり修験の世界、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)が観察した見えざるものたち、そして陰陽師といざなぎ流という広い観点から議論していただいた。興味深い視点をいくつも見いだすことができるだろう。本報告書が、あらためて見えざるものと日本人について考えるきっかけとなれば幸いである。」(平藤喜久子「はしがき」)
報告書のPDFは以下のリンク先からダウンロードすることができる。
『国際研究フォーラム「見えざるものたちと日本人」報告書』(PDF: 15.7M)
冊子版をご希望の方は研究開発推進機構事務課までお問い合わせ下さい。
【目 次】
はしがき
開催概要
ワークショップ1「見えざるものをエガク」
「勧化本における地獄極楽と現世―『孝子善之丞感得伝』を中心に―」(遠藤 美織)
「浮世絵に描かれた〈みえざるもの〉―「羅生門」の図様的展開を中心に―」(渡邉 晃)
ワークショップ2「見えざるものをカタル」
「非人間の/による認識の存在論的造作」(廣田 龍平)
「雪、妖怪、ゆるキャラ―北越雪譜と越後のアイデンティティについて―」(ドリュー・リチャードソン Drew Richardson)
“Supernatural Snow Stories: Some Notes on Suzuki Bokushi’s Hokuetsu Seppu and Regional Identity in Echigo”(Drew Richardson)
国際研究フォーラム「見えざるものたちと日本人」基調講演
「湯殿山信仰のモノ文化における不可視性と秘匿性」(アンドレア・カスティリョーニ Andrea Castiglioni)
「ラフカディオ・ハーンと〈見えざるもの〉の交渉をめぐって」(小泉 凡)
「陰陽師からいざなぎ流へ―見えるものから〈見えざる世界〉を探る技法―」(斎藤 英喜)