古代—祓の祖型成立
ホーム » テーマ解説 » 古代―祓の祖型成立
日本における祓の歴史は古く、古墳時代中期には、現代の祓に通ずるような道具を用いて罪・穢を除こうとしていたことが推測される。他方、祓が神によってなされるもの、という考え方も古代からあった。朝廷の祓である大祓が行われる時には、祓を行う必要性や神々による祓の仕組みを説く「大祓詞」が読みあげられ、祓が神々のなせるわざであることを認識することができた。平安時代中期になると大祓詞はその内容が広く知られることになるが、程なく、祓を行う陰陽師・僧侶などが神々による祓を行うようになる。陰陽道・仏教がこうした祓を受け入れたことは、大祓と密接な関係にある中臣祓を広めるきっかけにもなった。
A 大祓と祓のこころ
祓は罪などの不祥を除く儀礼として古代朝廷でも行われていた。朝廷の祓は様々な方法で行われていたが、毎年6・12月末に行う大祓という祓は重要視されていた。大祓は、天武天皇の時代（飛鳥時代）から確認され、奈良時代に完成した基本法典・律令に明記された。大祓は、宮中で行われる場合と、諸国で行われるケースに分けられるが、宮中の大祓は、朝廷に仕える官人がひとつところに会する大がかりなものであった。
大祓は、その同日に行われる天皇の祓・御贖と同様、渡来系の人々の祓の影響を受けている。ただ、大祓に際して読み上げられる大祓詞は、日本における祓の必要性を解き、神々によって罪が祓われてゆくさまを明らかにしている。
この大祓詞は、平安時代になると、「式」という法制書によってその内容が公表された。その時期は、中臣祓のような「神々による祓」に対して、人々が関心を高め始める摂関期よりも少し前のことである。大祓がこうした祓の原型なのか、あるいはそうではないのか、という議論はあるが、祓の広がりに、神々によってなされる大祓が一定の影響を及ぼしていたことは疑いない。
関連資料
関連トピック
このページの冒頭へ
B 祓のためのもの
祓にあたり準備されるものの種類の多さは、『延喜式』を見れば容易に理解できる。具体的には、人形などの模造品のほか、麻や綿などの繊維品、刀などの武具、馬、さらには食品などであり、祓によって準備されたりされなかったりした。これらのものは、（1）罪をあがなうために差し出す祓つ物、（2）罪などを移したり除去したりするために使うもの、以上2種類に大別できるが、祓の方式が多様であるため、（1）と（2）のいずれかにはっきりと当てはめることが難しい場合もある。この点については、罪を移した（2）は（1）に含まれるという、『釈日本紀』（鎌倉時代の『日本書紀』註釈書）の解釈が参考になろう。
『延喜式』に限らず、奈良時代から平安時代にかけての考古遺物や、他の文献を見ると、さらに多様な祓の道具があったことが分かる。舟形・馬形・解縄・菅抜はその代表例といえよう。しかし、いずれも「神々による祓」のためのものであった可能性が高い。多様な物を用いての、つまり、さまざまな形式による祓は、「神々による祓」という共通した観念によって維持・展開されたものと考えられる。
関連資料
関連トピック
このページの冒頭へ
Copyright© Research Center for Traditional Culture, Kokugakuin University 2010-2011 All Rights Reserved.
お問い合わせ