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3-1 従業員の採用と企業側が学生に求める知識・技能(問20〜22)

板野 新一

3-1-1 前年度と比べた従業員の増減(問20)

 

全体での企業の従業員数は、増加(12.1%)、やや増加(17.9%)、かわらない(20.0%)やや減少(31.4%)、減少(17.4%)と現在の不景気の影響で従業員の数はやや減少の傾向にある。企業の従業員の数が減少しているなか、企業規模別・業種別に見てみるとどのような影響が出ているのだろうか。

【規模別】企業規模別に見てみると300人未満の企業ではやや減少(26.5%)、かわらない(24.5%)、やや増加(20.4%)と全体的にやや減少という企業が多いものの、あまり開きがない(3-1-1)300999人の企業では、やや減少(38.0%)が一番多い。1000人以上の企業になるとやや減少(29.3%)減少(24.4%)と従業員の数は減少傾向にある。

【業種別】業種別では、全体の企業の従業員数は、企業規模別に見たパーセンテージとあまり差がない。しかし、各業種別に見てみると(3-1-2)、建設業ではやや減少(50.0%)、減少(33.3%)と減少傾向にある。法人向製造業ではやや減少(33.3%)、かわらない(25.9%)とやや減少の傾向がある。個人向製造業では、やや増加(29.3%)、かわらない(22.0%)とやや増加の傾向がある。卸売・小売業では、やや減少(45.8%)、かわらない・やや増加共に(16.7%)とやや減少傾向にある。サービス業に至っては、増加(25.8%)、かわらない(19.4%)と増加傾向にある。

企業規模では300人未満の企業がその他の規模の企業に比べて、やや増加しているのがわかる。また、業種別では、建設、法人向製造、卸売・小売は減少しているが、個人向製造とサービスは増加してきている。この調査の結果、現在不景気ではあるが個人向製造業、サービス業の中小企業で従業員数が増えてきているのがわかる。

 

3-1-2 新入社員の学歴別の増減傾向(問21)

 

【企業規模別の特徴】(3-1-3)

大学院卒の増減

  全体では変わらない,無採用の傾向がある。300人未満と300999人の企業では、変わらない、無採用が多く1000人以上の企業では、増加(34.1%)と増加の傾向がある。

大卒文系の増減

  大卒文系は、どの企業規模でも変わらない(30.0%前後)、減少(44.0%前後)であまり開きが無く、採用数は減少している傾向にある。

大卒理系の増減

  大卒理系は、やはり変わらないと答えている企業が、40.0%前後で一番多いが、次いで多いのが増加・減少共に25.0%前後だが、大卒文系にくらべて増加していると答えている企業が多い。

短大卒の増減

  短大卒業者は、減少と答えている企業が過半数の50.0%を占めている。次いで変わらないという企業がどの企業規模でも多い。

専門学校卒の増減

  専門学校卒業者も、短大卒と変わらず採用者数は減少の傾向にある。

高卒の増減

  高卒者も、短大・専門学校と同様に減少傾向にある。また、その中でも一番採用者の数が減少しているという結果が出た。

企業規模別で見た結果、長引く就職氷河期で高卒・専門卒・短大卒は、採用に積極的な企業が少なく就職が厳しいのが現実である。また、大卒文系も採用者の数は変わらずまだ減少傾向にあるようだ。しかし、大卒理系や大学院卒は、増加傾向にあり、企業側も何らかの特技や専門的な知識を持った人材を採用してきているということが解った。

 

【業種別の特徴】(3-1-4)

大学院卒の増減

  全体では無採用(32.6%)変わらない(29.8%)の順になっている。また、建設、法人向製造、卸売・小売サービスでは、この比率は変わらない。しかし、個人向製造では増加と答えた企業が34.1%、変わらないの36.6%に次いで多い。

大卒文系の増減

  建設は、減少と答えている企業が61.1%とかなり高い数字である。個人・法人向製造は、ともに変わらない、減少と答えた企業が同じぐらいの比率であった。また、増加と答えた企業が卸売・小売(20.8%)サービス(29.0%)と増加傾向にある。

大卒理系の増減

  建設は、減少(55.6%)と答えた企業が多く。法人向製造、サービスは、変わらない・減少の比率が高い。しかし、卸売・小売(29.2%)個人向製造(41.5%)と増加していると答えた企業が多かった。

短大卒の増減

  短大卒は、減少、変わらないと答えている企業がどの業種でも高い比率を占めている。

専門学校卒の増減

  専門学校卒業者も、短大卒と変わらず採用者数は減少の傾向にある。

高卒の増減

  高卒者も、短大・専門学校と同様に減少傾向にある。また、その中でも一番採用者の数が減少しているという結果が出た。特に、建設では減少と答えた企業が72.2%とかなり高い比率になっている。

  業種別に見た結果、短大卒・専門学校卒・高卒は就職が厳しい状態は変わらない。しかし、大卒文系は、卸・小売、サービスで増加傾向にあり、大学院卒、大卒理系では、個人向製造で増加の傾向がある事が解る。また、業種別に見ると個人向製造の新規採用社の数が増加の傾向にある。この結果を見ると就職氷河期は終わりに近づいてきているのではないか。

 

3-1-3 新規採用者が就職前に身につけておくべき知識・技能(問22)

 

【規模別の特徴】(3-1-5)

  どの企業規模の企業でも、一般常識、元気・明るさ、礼儀作法の順に高く。次いで、パソコン操作、企画力と続いている。しかし、企画力では、300人未満の企業が28.6%なのに比べて、1000人以上の企業では58.5%と高い。また、語学力でも、300人未満の企業14.3%に比べ、1000人以上の企業では34.1%と高い。この結果、1000人以上の大企業では、企画力や語学力が求められていることがわかる。

 

【業種別の特徴】(3-1-6)

どの業種でも、一般常識、元気・明るさ、礼儀作法の順で高い確率が出ている。次いで、パソコン操作、企画力の順で高い。しかし、企画力では、法人向製造で63.0%卸・小売業で58.3%と高く。建設では16.7%サービスでは25.8%と低い。語学力では、法人向製造で37.0%、個人向け製造で29.3%と高く、その他は10.0%ほどであまり必要とされていないようだ。また、統率力では、卸・小売業で41.7%と高い回答率である。

 

【新規採用者が就職前に身につけておくべき資格】

 

22で「各種資格」と回答した24社を対象として、具体的にどのような資格を要求するのか質問した。【単純集計結果】

 

【規模別の特徴】(3-1-7)

300人未満の企業では、運転免許、簿記、宅建の順に高く。300999人の企業では、運転免許、簿記、情報処理の順に高く。1000人以上の企業では、運転免許、情報処理、その他の順に高くなっている。

しかし、これらは、回答数が少ないため、正確性が乏しいと思われる。

【業種別の特徴】(3-1-8)

建設業では、運転免許が66.7%で簿記、宅建が共に50.0%と高く。法人向製造では、運転免許が80.0%で簿記、TOEIC、情報処理が40.0%と高い。個人向製造では、運転免許、その他が66.7%である。卸・小売業では、運転免許が100.0%で、英検が50.0%と高い。サービス業では、情報処理が33.3%で一番高い比率が出ている。

しかし、これらは、回答数が少ないため、代表性が乏しいと思われる。

 

Copyright 2001, Shinichi Itano

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