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 日本文学専攻  

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日本文学の世界 2002.9.20.掲載

青木 秋澤 池内 石川 岡田 辰巳 傳馬 豊島 針本 山岡

タイトル!

   共有の物語

 

           執筆担当  中世文学 松尾葦江

  

  年令の異る人々が同席して、談笑しながら、しかし互いにそれとなく長幼を知ろうとするとき(日本では、さりげなく年令やキャリアによって使い分けねばならぬ作法があり、それを目だたぬように、しかもきっちりと出来ることが、自らも尊敬と信頼を得ることになるから)どんな方法をとるか。父たちの世代は(男同士の場合だが)、「それで君、兵隊は」と訊いたらしい。いつ、どこで招集され、どこへ配属されたかで、およその年令と、体験とが判り、共通の話題ができた。私たちの世代は、学校給食の話で盛りあがる。どんなおかずが待望され、何が苦痛だったか。都会と地方とでは多少のずれがあるのだが、およその年令が判り、想い出が共有される。後輩たちの世代は、どうやらテレビ・アニメの話題らしい。
 これは同世代間で共有される「物語」だが、国民の間で共有される物語を、現代の我々はどれだけ確保しているだろうか。漫画「サザエさん」には、田原藤太の百足退治や、那須与一の扇の的が出てくるが、今やどれだけの人が、一目で「ああ あの話だ」と解るだろうか。下に掲げた川柳の中、古典文学の原文を引き出して説明できるのは、何句ですか?試しにやってみて下さい。

 手のこんだ化物の出る紫宸殿
 あの時は気がもめたよとあやめ言ひ
 水鳥は逃げてひよどり最後なり
 状箱がくれば呼ばれる大夫坊
 兼平の手本はめつた習はれず
 山桜読人知らぬ者はなし
 山桜百には漏れて千に入り
 教経の入水あぶくが三つ出る
 妄語戒関所で弁をふるつてる
 佐殿(すけどのも痛しかゆしの含み状