【目次|SPSSの使い方】へ

集計・分析方針

1.変数・変数値ラベルなど

 データの入力が終了する以前の段階、調査票が完成した段階で変数・変数値ラベル欠損値定義、事前に尺度構成を済ませている加算尺度のSPSSシンタックスを作成しておくことが望ましい。

2.記述統計

 データの入力が終了したら、まず最初に、単純集計をとり、この段階で論理チェックなどのデータ・クリーニングを終了する。
 つぎに、性別・規模別などといった「基礎クロス集計」をとる。ここまででも「立派な」調査報告書は書ける。
 また、従属変数が(順序尺度を含む)量的変数である場合では、グループ間の平均値の差をとってみる。

3.尺度構成など独立変数と従属変数との区別がない分析

 抽象的な概念を調査票の設計の段階では個々の具体的な指標に分けて質問し、分析の段階でデータの要約を試みることがある。
 探索的分析を含み、データの要約を試みるために行う代表的な技法が因子分析である。
 因子分析の結果、加算尺度や因子得点により尺度構成を行う。

4.独立変数と従属変数との区別がある因果分析

 因果関係、すなわち、原因(独立変数または説明変数)と結果(従属変数または被説明変数)との関係は、社会調査データの分析では、つぎの3つの要件が満たされた場合に、xが原因でyが結果となる因果関係が認められたと判断する。

 1.ある変数xと他の変数yとの間に共変関係(相関関係や関連を包括した関係)が認められること。
 これは2変数間の関係の分析であり、前述した記述統計と共通するものもある。独立変数と従属変数がともに質的変数である場合にはクロス集計、独立変数が質的変数で従属変数が量的変数である場合はグループ間の平均値の差、独立変数と従属変数がともに量的変数である場合には相関分析を行う。

 2.他の変数zの影響を統制した場合でも当該のxとyとの変数間に共変関係が認められること。
 他の変数zの影響を統制した場合でも当該のxとyとの変数間に共変関係が認められるかどうかを検証するために、偏相関分析回帰分析などを行う。

 3.当該の変数間のうち片方の変数xが時間のうえで先行して変化しもう一方の変数yが時間のうえであとからて変化すること。
 ただし、この3番目の条件はパネル・データがなければ検証できないため、横断的データの分析のうえでは、慣習として1.と2.の条件が認められれば因果関係が認められたと判断する。パネル・データが収集できた場合に、xとyとのどちらが時間のうえで先行して変化するのか=原因であるのかを特定するために交差的時間差相関分析を行う。

 因果関係の分析例での分析方針は、まず、組織の成果(=有効性)を操作的定義した相互評価による生産性を従属変数とする分析、つまり、相互評価による生産性はどのような共変関係や因果関係を持つのかを調べる分析である。この方針での分析では、満足と成果との関係【を開く】という組織研究の古典的なテーマを扱う。 また、もうひとつの分析方針は、ネットワーク型組織を操作的定義した自律性と自発性を独立変数とする分析、つまり、自律性と自発性はどのような影響を与えるのかをを調べる分析である。なお、ネットワーク型組織とは、組織を構成するコミュニケーションを遂行する行為主体(従業員や部門)が持つ意思決定の自律性の程度が高く、説得によって統制がなされる組織のことである(小木曽(2007:15)。具体的には、 PID調査【を開く】のデータを使用して、1.ある変数xと他の変数yとの共変関係=相関関係を分析し、2.他の変数zの影響を統制した場合でも当該のxとyとの変数間に共変関係が認められるかを調べるために 偏相関分析回帰分析を行い、3.当該の変数間のうち片方の変数xが時間のうえで先行して変化しもう一方の変数yが時間のうえであとからて変化することを調べるために交差的時間差相関分析を行った。

【文献】

Copyright: by Michio Ogiso, Revised on 10. Dec. 2013

【先頭行へ】 【目次|SPSSの使い方】へ